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【1月のクリスマス】ロシアの支配を脱したウクライナ正教のクリスマス・ミサに沸くキーウの平和《不肖・宮嶋 ウクライナで神と遭う》

2023/02/02
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粉雪舞うキーウの町に到着

 バスは予定を1時間以上遅れて首都キーウに到着した。寒い。スマホで白タクを手配し到着までの20分は吹きさらしのターミナルで1人ふるえるだけであった。クリスマス・イブの正午より、この侵略戦争を始めた張本人のプーチン大統領がウクライナに対し36時間の停戦を提案してきたが、そんな戯言信じるのはごく一部の日本の政治家くらいである。今回の停戦も自分らが一息ついて戦線立て直すためなんは見え見えである。

 そんな中、300年以上続いたロシア正教を追放したウクライナ正教は、史上初の独自のクリスマス・ミサを行う予定である。あの神をも恐れぬ、悪魔に魂売った男がおのれんとこの宗教のメンツつぶされ指をくわえてクリスマスを過ごすはずがない。これまでも学校やろうが、病院やろうが、おかまいなしにミサイル降らせてきたやつである。自分からコキだした停戦中も、平気で教会を狙ってくるやも知れんのである。

 朝の7時を過ぎてもまだ暗いキーウの町に目が慣れると粉雪が舞っていた。定宿にしている安ホテルから一歩外にでるや、寒いというより、痛いのである。8時を過ぎ、世界遺産にも登録されたウクライナ人の誇りでもあるペチャルシク大寺院にはすでに多くの信者がかけつけていた。

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世界遺産でクリスマス・ミサ 撮影・宮嶋茂樹

500人以上の信者が集ったペチャルシク大修道院

 粉雪舞う零下の屋外から一歩聖堂のなかに足を踏み入れると、もはや500人以上の信者で立錐の余地もなかった。カメラのレンズもファインダーもたちまち結露しはじめ、解消するのに10分以上レンズと格闘することになった。当然厚着してきたので、汗も吹き出す始末である。

 しかしこの日のクリスマスはウクライナ人にとっては特に特に、特別なクリスマスになるのである。ロシア正教を追放し、東方正教会の正統な後継と認められたウクライナ正教として史上初めて生誕祭(クリスマス)のミサを開催するのである。しかもそれを仕切るのはウクライナ正教のトップ・エピファニー主教なのである。

威厳あふれる聖職者 撮影・宮嶋茂樹
寺院のなかにもクリスマス・ツリー 撮影・宮嶋茂樹

 ワシは別にクリスチャンではない。そりゃあ前妻とはイエス・キリストの前で永遠の愛を誓ったが、そりゃあ建前上のことで、それ以降は仕事以外では一度も教会に行ったことはない。それでも世界遺産にまで指定されたこの寺院の壁画と絢爛豪華な内装、クリスマス・ツリーに燭台、その荘厳さに圧倒される。白い法衣に身を包んだ聖職者やその弟子たちのまこと徳の高そうなご様子、敬虔な信者たちの姿……いっやあ、日本のクリスマスっていったい何なんやろ?

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