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「会社員に専業主婦、健康な子ども2人」霞ヶ関エリートが考える“標準家庭”の限界《貧困、介護、DV、LGBTQ+…家族のあり方はさまざま》

「会社員に専業主婦、健康な子ども2人」霞ヶ関エリートが考える“標準家庭”の限界《貧困、介護、DV、LGBTQ+…家族のあり方はさまざま》

『社会の変え方 日本の政治をあきらめていたすべての人へ』#2

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「気持ちに添った届け出」で暮らしやすいまちに

 たとえば、以前に異性同士で結婚して子どもを授かっていたAさんが、そのあと同性のBさんとパートナーになったとします。しかし、Aさんの「子ども」とBさんの親子関係が認められなければ、日常のほんのささいなことさえ不便です。Bさんが子どもを迎えに保育園に行っても、親として扱ってもらえない。子どもを引き取ることさえ難しいのです。医療機関や不動産会社でも、同様の問題が起こるでしょう。

 多様な家族のカタチは、今の日本の法律にはありません。霞ヶ関からは見えていないかもしれません。けれども、私たちの目の前、まちの中に現実にあるのです。それが今の冷たい社会の現状なら、家族が家族としてあたりまえに過ごせるよう、市民に身近な基礎自治体から制度を整えていくしかありません。せっかくパートナーシップを宣誓しても、困りごとの解消につなげられなければ意味がないのです。

 明石市では、パートナー同士の関係とともに、全国で初めていっしょに暮らす子どもも合わせて関係性を証明する「パートナーシップ・ファミリーシップ制度」を開始しました。

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 性別に関係なく利用できる制度にしたので、LGBTQ+の方だけでなく事実婚の方も対象です。また、当事者の気持ちに添った届け出ができるよう、6種類の届け出様式を用意しました。パートナーシップ届、ファミリーシップ届、結婚届、家族届、事実婚届、そしてタイトルを任意に記載できる○○届です。

 制度開始に先立ち、2020年の末には市内医療機関と連携し、制度実施後もさらに市医師会との包括連携協定を結ぶなど、医療機関で安心して家族としての対応が受けられるように働きかけていきました。

明石駅前の一等地につくった「あかし市民図書館」には老若男女の市民が集う 提供:明石市役所

「ありのままが、あたりまえのまち」

 その他にもこの制度で、市営住宅、市内の県営住宅・県公社住宅への入居、市営墓園の使用・承継、犯罪被害者等遺族支援金等の給付、税証明書の申請、保育施設の申込などが家族として可能になっています。また、これまで「同居人」しか選択できなかった住民票の続柄を「縁故者」に変更することもできるようになりました。法で認められているわけではなく十分ではありませんが、当事者の声を踏まえて実効性ある制度を心がけました。

 その後1年あまりで、ファミリーシップ制度など、子どもとの関係を証明する自治体は全国で40以上になりました。パートナーシップ制度の導入自治体も2022年11月で242になり、総人口の62%をカバーするまでになってきました。

 目指すのは「ありのままが、あたりまえのまち」。誰もが自分らしく生きることができる社会です。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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