1ページ目から読む
3/3ページ目

日本の婚姻制度は相当な議論が必要

 ただ、もともと明治憲法下の民法で規定された婚姻制度自体は、若い男女が子どもを産むために当然結婚するものとしていたころからの仕組みなのであって、現代のように男女による生殖可能性を考えることなく高齢結婚したり再婚したりすることは考えられていませんでした。

 高齢夫婦も同性婚も、あらたに子どもを産むことはできず、できたとしても養子を取るところまでであって、国民を増やすことには直接は資しません。国が保護する婚姻の前提としている生殖可能性は、国民がいなければ国家も社会も納税もままならないことを考えれば当然前提とされるものの、現代社会において、これらの婚姻制度を支えてきた社会環境も変化してきたぞと言えます。

 他方で、前述のニュージーランドの議員のように、男女間であれ同性間であれ、愛し合う二人を認めるための公的制度としての婚姻を認めるという話は、国が「愛し合う」という国民の内心に踏み込んで婚姻を認めるべきかという非常にデリケートな論点を孕みます。社会制度上、多様性を認めるという方向性があるにせよ、そもそも生物学的な性別でしか規定してこなかった我が国の婚姻制度が、個人の愛しているという主観や内面に踏み込んで婚姻制度として保護すべきものとするかは相当な議論が必要です。

ADVERTISEMENT

石埼学さんのTwitterより

庇護を与える婚姻と公的にパートナーとして登録するのを分けたらいいのでは

 このようなことを龍谷大学の憲法学者である石埼学さんがTwitterで問題提起をしたところ、またぞろネット特有のキャンセルカルチャーが発動しました。大学にクレームがやってくるなどの問題も発生していて、面倒くせえことが起きてるぞって思うんですよね。石埼さんの書いていることは、法学部で多様性を扱ったり婚姻制度をちょっと勉強すれば必ず出てくることです。

 岸田首相は、荒井氏更迭の理由について「今の内閣の考え方には全くそぐわない言語道断の発言だ」と述べました。言論・内心の自由の観点から「問題発言をしたから更迭した」とは言えず、あくまで「政権の方針と合わない発言をしたから更迭」となったのは、この問題に興味のある人はちゃんと心に留めておくべきで、一連の問題の奥深さを知ることになるわけですね。

 同性婚の議論を進めて、生殖可能性を突き詰めるのであれば高齢婚は法的庇護を与えないのかという議論にもなり得ます。もうさ、制度として庇護を与える婚姻部分と、公的にパートナーとして登録する部分とを分ける運用でいいんじゃねって思うんですけど、みなさんどうですか。