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買淫の結果を細かく査定、罵倒語や蔑称が充実する「魔改造」…没後1年経ってもなお立ち消えぬ西村賢太伝説第2弾

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 昨年2月5日、希代の私小説家・西村賢太さんが突然この世を去った。享年54。

 だが、己をモデルにした居丈高にして傍若無人な主人公・北町貫多という特異なキャラクターは、今も作品の中で生き生きとやりたい放題やっている。仕事はサボる、同居女性に暴力をふるう、親を脅して金をせしめ、友人知人に不義理する。

 野蛮さが一掃されたかに見える現代で、悪漢・北町貫多のアンチヒーローぶりは多くの読者を魅了している。

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 あくまで小説、作者をモデルにしたフィクションだけに、多少はカリカチュア、オーバーな表現なのだろうなどと侮ってはいけない。作家本人を知る担当編集者が見た、真実の西村賢太は、小説のキャラクターに負けず劣らずの大物だった。

芥川賞贈呈式の1コマ。同時受賞の朝吹真理子さんと Ⓒ文藝春秋

 その数々の逸話の一端を前回ご披露したが、その後の反響は非常に大きかった。「あれもあった」「こういうことがあった」等々、担当編集者や西村さんの知人からもたらされたさらに過激な伝説を、第2弾としてお届けする。