若い世代の間で風呂無し物件を選ぶ若者が増えているらしい。2022年末、日経新聞が「風呂無し物件、若者捉える シンプルライフ築く礎に」という記事を掲載し、「シンプルな生活や銭湯での人との触れ合いを求め、若者たちがあえて風呂無し物件を選択している」というニュアンスで報じたところネット上で批判が殺到した。
「金が無いから仕方なく」なのか、それとも「あえて」なのかはともかく、現実に風呂無し物件に住んでいた経験者にリアルな生活ぶりを聞いてみた。
なぜ風呂無し物件を選んだのか?
話を聞いたのは現在36歳の高原浩二さん(仮名)。2年ほど前まで東京都心の風呂無し物件に3年間ほど住んでいた。もともと24歳の時に芸人になるため沖縄から上京し吉本興業のNSCに入学。それから10年間ほどを若手芸人として東京で過ごしており、その間はずっと風呂無しの生活だったという。
「僕が東京で風呂無し物件を借りて住んでいたのは32歳から34歳までの合計3年間。幡ヶ谷に1年、新宿に約2年です。それ以前は芸人仲間の家に居候するような形であちこちを泊まり歩いていました。
ずっと売れなかったので芸人としての仕事はほとんどなくて、そっちの収入は1年で2~3万円あればいいほうでした。それで生活のために普段はラーメン屋でバイトをしていて、こちらの収入は月15万円いくかいかないかくらい。
居候で一番長かったのは笹塚に住んでいた吉本の同期の部屋で、キッチンの細長い床のスペースで寝起きする生活を5年くらいやってましたね」
その居候先を出て自分で部屋を借りることになった時、設定した部屋探しの条件は「とにかく安い家賃」と「渋谷まで徒歩か自転車で行ける距離」だった。渋谷は高原さんが出演する吉本の劇場があり、バイト先もすぐ近くだった。
「結果、コスパを考えて風呂無し物件に住むことにしました。芸人仲間でも僕以外に一人くらいしかいなかったと思います。
もし収入が月30万~40万円くらいあったら普通に風呂付を探していたと思うけど、やっぱり貧乏だったので、お金を節約しなければならなかった。風呂付きはそれだけで4~5万円は家賃が高くなりますからね。
それに、実はお風呂がなくてもそんなに困らない状況だったんです。というのも、当時僕が働いていたバイト先のラーメン屋さんに従業員用のシャワー施設が付いていて、そこを使えばいいかと思ったんです。
風呂の有無より劇場やバイト先までチャリで行ける距離に住むことの優先順位が高かったので、最初から風呂無し物件を中心に探しました。物件探しはネットで確かYahoo!不動産だったかな。
郊外に行けば安い物件はたくさんあるんですが、やっぱり都心となると数も限られていて。候補も少ないからすぐ選べました」