床がギシギシ鳴る音で盛り上がる
「僕も隠してなかったし、笑いのネタにもしてましたからね。営業先のクライアントの社長なんかにごちそうしてもらう席で部屋の話をすると、社長の駐車場代より安かったりするから、それがまたウケたりして。
そういう部屋に住んでいるって言うと、結構みんな部屋を見に来たがるんです。まあ、バイト先の大学生や女の子とかは『30歳を過ぎても風呂無しの貧乏暮らし』というのにはちょっと引いてたかもしれませんが。
女の子も結構、部屋に連れて来てましたよ。よくマッチングアプリを使ってたんですが、そこで『こんな狭い部屋に住んでる』っていうと、なぜか興味を持つ子が結構いた。共同玄関から階段を上がるときの床がギシギシ鳴る音を聞いて、『マジ、ウケる!』なんて笑ってました。
壁は薄かったはずなんですが、近隣住民とのトラブルみたいなものも一回も無かったですね。安い物件ということは百も承知ですから、お互い我慢できたのかもしれません」
3年間の風呂無し生活は「意外に悪くなかった」
結局、この部屋に住んでいる時に知り合った彼女と同棲することになり、部屋を出ることにした高原さん。3年間の風呂無し部屋での生活を「意外に悪くなかった」と振り返っている。
「バイト先にシャワーがあったことが大きかったと思います。それともうひとつ、やっぱり芸人になるという夢があったから平気だったんでしょうね。もし僕が普通の会社員やフリーターとかだったら気になったかもしれません。
そういえば、新宿の部屋を引き払ってから1カ月後くらいにたまたま近くを通ったので部屋を見にいったんですが、もう新しい人が入居してました。やっぱり人気物件なんでしょうね」
現在の高原さんは地元・沖縄に戻って結婚し、会社勤めをしている。最後にもうひとつだけ当時の思い出を話してもらった。
「幡ヶ谷に住んでいた時、『水曜日のダウンタウン』のロケが来たことがありました。確か『貧乏若手芸人の部屋にはデカいテレビがありがち』みたいな説でした。部屋は狭かったけどたまたま先輩からもらった大きめのテレビがあったので番組に出してもらえたんです。あれはラッキーでしたね」