リフォーム済みの快適(?)な風呂無し物件へ
新しく見つけた物件の場所は新宿7丁目で明治通りを少し内側に入ったあたり。入り組んだ路地の奥に建つ2階建ての古アパートで築年数は40~50年程。渋谷から少し遠くなったが、以前の部屋に比べて随分住みやすかったそうだ。
「建物は相変わらず古くて、共同玄関のうえ、部屋のドアも単なる引き戸で鍵は南京錠みたいなものが付いてるだけ(笑)。幡ヶ谷の部屋は押入れがあったけど、収納も一切なかった。ただ家賃がとにかく安くて管理費込みで3万3000円でしたからね。
しかも、一応リフォームをしたみたいで4畳半の部屋の床はフローリングだったし、使わなかったけどコンロ置きのスペースもあった。何と、エアコンまでついていたのは助かりました。
僕の部屋は2階にあって、他に6世帯ぐらいが入居していたはずです。たまに玄関で顔を合わせたりもするんですけど、隣は一人暮らしのおじいさんで、いつも週末になるとキムチ鍋の匂いがしてたので韓国系だったかもしれません。
反対側の部屋には一時期、おばさんがいた覚えがあるんだけど交流はなかった。あともう一人、1階に若い男の人が住んでましたね。不動産屋さんに聞いたんですが、その人は普通の会社員で、近所に会社があってセカンドハウスみたいな感じで借りていたそうです。
人の出入りは思ったより激しくなくて、住んでいた2年間で引っ越しをした人はいなかったと思います」
ラーメン店でバイトをしながら芸人として活動する生活は以前とさほど変わらなかったそうだが、さすがに独り暮らしが続いたため家具もそれなりに買い足した。
「床置きのテーブルと座椅子を買ったんですが、少しでも部屋を広く錯覚させたかったから、どちらも通常より微妙に小さい、ミニチュアサイズのものを探して買った記憶があります。とはいえ家具はそれくらいで、あとは万年床だけ。
シンプルライフと言えばシンプルライフでしたよ。日経新聞の記事は読んでいませんが、荷物も少なくて済むし掃除も楽。若い人があえて選ぶというのも理解はできます」
風呂無し生活でリアルに困ったことは
当時の思い出を楽しそうに語る高原さんだが、風呂無し物件の貧乏暮らしで困ったことはなかったのだろうか。
「風呂無しは別に問題ないのですが、ひとつだけ困ったのがトイレの問題です。共同トイレはちゃんとウォシュレットが付いたタイプで清潔でしたけど、他の住人とタイミングがカチ合うことがあるんです。
生理現象ですから急に行きたくなって他の誰かが入っているともう大変。そんな時はアパートを飛び出して近所の公園にある公衆便所まで走ってました(笑)」
こうして聞くと、友達を呼んだり女の子を泊めたりすることはさすがに難しかったのではないかと想像してしまうが、意外にそうでもなかったようだ。