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地方創生は「ファクト・イズ・ファクト」からはじまる

――「石井ファンド」は製造業の低迷という現実、物流網改革プロジェクトは輸送コスト高という現実からスタートしました。当然のこととはいえ、地方創生の第一歩はことさらに無から盛り上げようということではなくて、問題を洗い出し、何が不足しているか認識するところからという気がします。

石井 そうですね、まさに「ファクト・イズ・ファクト」なんだろうと思います。実はこれまで、地方創生に関する事業の中で官庁が持っているデータから戦略を練ることが意外となされていなかったんです。そこで、経産省の地域経済分析システム(RESAS)のビッグデータを使う、全国初の取り組みをしました。また、法人住民税のデータを使った道内各地の産業構造調査も試みました。すると興味深い事実が分かりました。たとえば北海道の観光地は夏か冬は商売になるけど、それ以外が長すぎて付加価値があまりない。

 

――沖縄だったら年がら年中観光シーズンですけど、北海道はそれがごくわずかだと。

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石井 1泊あたりの単価が高い、長期滞在型のリゾートホテルがないのも大きいですね。ですから、北海道の観光をどう通年型にできるか、そして海外観光客の6割が札幌圏に滞在しているんですが、他地域にも足を延ばしてもらえるような「広域観光」をどう展開すべきかという課題がはっきりと見えてきました。

――「北海道ファン」づくりも大事になってきそうですね。

石井 北海道の定住人口が減っていくのであれば、交流人口を増やしてGDPを上げていく手はあると思います。今、海外からの観光客が平均15万円程度、北海道で消費していくんです。ここ数年は、年間約200万人が来道していますから、実に3000億円のGDP。北海道全体のGDP19兆円弱のうち、水産物の生産高が3200億円ですから、これに匹敵するだけの効果があるということです。

銀行なのに「数値を気にしない部署」をつくった

――さすがに「ファンづくり」めいたことは銀行のお仕事から外れてしまいますか。

石井 いえいえ、私どもの本店には地域産業支援部という部署がありまして、観光、ものづくり、食の3部門のチームがそれぞれ商談会を開いたり、海外で「売り込み」の機会を作ったりして、産業支援のハブになって色々やっています。ここは全く計数のない部署です。

 

――計数のない?

石井 銀行だと普通、貸出計数がどうだとか、数値を気にして仕事をしなければならないわけですが、ここでは数値化できない価値を生み出すような仕事を担って欲しいと思っています。全道170店ある支店から地域情報を集めるのも一つの仕事ですし、ものづくりチームには出資機能も持たせていますから、イノベーションファンドとは関わりが深い。地域の信金・信組さんとも協力しながら、まさに、地域経済をコーディネートする部署です。

――何人くらいの部署なんですか?

石井 30人くらいです。そして銀行員だけじゃないんですよ、ここの部署にいるのは。北海道庁からも、札幌市からも来ていますし、開発局や北大、北海道立総合研究機構というシンクタンクからも。いろんな人がいて、私も誰が北洋銀行のプロパーなのかわかんないくらいです(笑)。