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「仕事も収入もなくなった。どうすれば…」 落語が“深刻な状況”から復活したいくつかの理由

「仕事も収入もなくなった。どうすれば…」 落語が“深刻な状況”から復活したいくつかの理由

2023/02/21
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 だが、それでもコロナ禍での集客は困難を極め、寄席はピンチに見舞われた。2021年には寄席存続のためのクラウドファンディングが行われ、大方の予想を裏切り、1億円を超す支援金が集まった。「寄席文化をみんなで守る」という一体感が初めて生まれた瞬間だった。

 コロナ規制が緩められた昨年後半から、落語公演が活況を呈し始めた。生の落語会に観客が戻ってきたのだ。リアル公演からオンライン配信へ、そして再びリアルへ。主役はもちろん生の公演だが、オンライン配信も、もともと寄席の出番が少ない若手の選択肢の一つとして、今後も生き残っていくだろう。

生の落語公演に乗り出す「文春落語」

「文春らくご動物園」

 では、落語そのものはどう変わったのか。定年のない演芸の世界では、もともと高齢の演者が頑張っていたのだが、ここ数年で実績あるベテランが亡くなった。人間国宝柳家小三治、芸歴81年(!)の三遊亭金翁(四代目金馬)、新作王の三遊亭円丈、寄席で軍歌を歌う名物男・川柳川柳、そして六代目三遊亭円楽――。彼らがいなくなったために空いた“出番″には、柳亭小痴楽、桂宮治、春風亭柳枝ら近年真打に昇進した気鋭の若手が台頭し、寄席のレギュラーに定着しつつある。今、寄席は「イキのいい落語」の聞きどきなのである。

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 コロナ禍を生き抜く落語会のかたちとして、手前味噌を一つだけ。柳家喬太郎を核とするオンライン配信をコロナ禍で継続的に続けてきた「文春落語」が、今年から年数回ペースでの生の落語公演に乗り出した。第一弾は、4月27日、渋谷伝承ホールの昼夜公演「文春らくご動物園」だ。すべての演目に動物が登場し、彼らをめぐる悲喜交々の人間模様(?)が繰り広げられる。世代交代の流れに乗って、寄席や落語会の出番が増えた気鋭の若手中堅による渾身の公演。コロナと共存する時代の試金石となりうる会だと確信している。