花街には、古くから客が舞妓や芸妓のパトロンとなる「旦那さん制度」が存在した。桐貴さんは舞妓だった時に3人の旦那さん候補がおり、奉公期間より前に辞めるのであれば男性に3000万~5000万で「身受け」してもらうようにと置屋から迫られたと語っている。
Aさんのいた街では表立っては「旦那さん制度」は行われていなかったが、「強制されることはなくても、舞妓が体を許し、その対価をお客さんが支払うという実態はあった」と話す。
お舞台に出演するために「お客様と体の関係」に
「町の踊りのお舞台以外に、お流派の舞台があるのですが、そちらに出るには一人当たり何百万、何千万円というお金がかかります。芸妓のお姉さんたちはそのお金を出してもらうために、お客様と体の関係になることが多かった。舞妓もうちわや、踊りやお三味線の会に出るためのお金、仕事で使うバッグなどもろもろの出費をまかなうために、お客様と体の関係になっていました。
大きすぎる金銭的プレッシャーの問題
逆にお金は関係なく、お客様のことを好きになってしまったり、愛されたかったりして体の関係になる子もいましたね。置屋には黙って……というケースもあれば、置屋が関係を知っていて黙認するケースもありました。もちろん、それは一部の舞妓はんの話で、そうはならない子の方が多いんです。でも金銭的なプレッシャーから10代の女の子にこのような選択をさせてしまう、その環境自体に問題があるように私は感じていました」
そうした経験を経て、Aさんは花街を出る決断をするに至った。
そしていざ舞妓を辞める時にAさんが置屋から渡されたのは、自分の“収入”が書かれた見覚えのない確定申告書だった――。
(#2に続く)