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「舞妓を辞めるとき“身に覚えのない確定申告書”を渡された。役所の人も『あー…』って」花街に蔓延する“グレーすぎる労働実態”《弁護士も「言い逃れはもう難しい」》

「舞妓を辞めるとき“身に覚えのない確定申告書”を渡された。役所の人も『あー…』って」花街に蔓延する“グレーすぎる労働実態”《弁護士も「言い逃れはもう難しい」》

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お茶屋組合に渡された「身に覚えのない確定申告書」

「辞めることが正式に決まると、街にあるお茶屋組合の事務所に行くようにとお母さんに言いつけられました。その事務所で渡されたのが、《廃業に伴う手続きのご案内》というお茶屋組合が作った書類と、廃業届、そして身に覚えのない確定申告書でした。

 事務所の人から書類について詳しい説明はなく、ただ『役所の人にこれを見せて保険料を減免してくださいって言いなさい』とだけ言われましたが、当時は未成年だったので、確定申告や保険料のことなんて何もわからず、ただただ困惑しました」

Aさんが渡された確定申告書

 上記の写真はその時に渡された《廃業に伴う手続きのご案内》、廃業届、そしてAさんが舞妓として在籍した期間に提出された確定申告書である。

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《廃業に伴う手続きのご案内》には、舞妓を辞めてから必要になる公的な手続きの手順が記されている。Aさんが廃業届と確定申告書を渡されたのは、(3)に記されているように「廃業により収入が減ったことを証明して保険料などを減額(減免)してもらう」ためだったのだろう。

 しかし、#1でAさんが語ったように、舞妓になったAさんが月々に置屋から渡されていたのはお小遣いの5000円のみ。舞妓としての収入があるとは、思いもしないことだった。

心当たりのない「200万円以上の所得」

 そもそも、Aさんは舞妓として個人事業の「開業届」を出した覚えも、毎年の確定申告書を提出した覚えもない。本人に代わって確定申告書を提出する際に必要とされる委任状を書かされた記憶もないという。

「確定申告書には、私の在籍した街のお茶屋組合の住所と、私の本名と芸名が記されていました。職業の欄にははっきりと、『舞妓』とある。私の確定申告書に間違いないのでしょうが、私は辞めるまでこの書類の存在を知りませんでした。収入金額の欄には営業所得として、5,5**,***円という金額が書かれていますが、数字の根拠はわかりません。雑所得として33,333円ともあるのですが、これが何を指しているのかもわからない」

「心当たりがない」という確定申告書

 後日、Aさんが住所変更のため役所を訪れた。しかし窓口へ行って言われた通りに話したが、Aさん自身が自分の置かれた状況を理解していなかったため上手く説明ができず、役所の担当者も戸惑っていたという。

「確定申告書の書類上は200万円以上の所得があったことになっていますから、減免してくださいと言っても『貯金はないのですか?』『なぜ払えないんですか?』と聞かれてしまう。私が元舞妓で、置屋からお小遣いしかもらっていなかったと説明して廃業届を見せると何かを察したようで、『あー、わかりました』と。結局、保険料は減免されましたが、それでも月々9000円は支払わなければなりませんでした」

 Aさんは舞妓を辞めた後、保険料を支払うためにアルバイトをしながら生活した。

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