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舞妓を辞めてから突然国保の納付書が届いた人も

「中卒で何も知らされずに突然国保の納付書が届いたのですが、アルバイトにとって月9000円は大金でした。もし自分で舞妓としての収入を管理し、確定申告書を提出できていたなら、うちわ代やその他の経費をそこに計上し、少しでも税金を節約することもできたはずです。なぜ自分の収入すら知らない舞妓が廃業した後、勝手に提出された確定申告書をもとに出された税額を収めなくてはならないのか……。あまりにも理不尽だと感じました。

 辞めてから元舞妓の方と話すうち、どの町でも同じようなことが行われていることを知りました。私はまだ組合から説明があった方で、廃業届や確定申告、保険料の減免のことを何も知らされずに突然国保の納付書が届いて驚いたと話している方もいました」

※写真はイメージです ©iStock.com

 労働問題に詳しい弁護士の渡辺輝人氏は、Aさんが提供してくれた書類の問題点をこう指摘する。

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 “個人事業主”ではなく“労働者”にあたる可能性

「2021年に不要になるまで、確定申告書には申告者の押印が必要でした。もし勝手に押印してこの書類を出したとすれば、まず一つ目の問題として、本人の意思に基づかずに確定申告書を出した税理士が有印私文書偽造・行使の罪に問われる可能性があります。内容についても本人は一切知りえなかったということですから、所得金額等が偽造されている可能性もある。

 一方、内容が本当ならこの所得金額は着物代やその他の経費を控除した金額のはずですが、舞妓本人がそれを受け取っていないのなら、誰が懐に入れていたのか。組合や税理士は本人に説明する義務があるでしょう」

「心当たりがない」という確定申告書

 また渡辺弁護士は、「舞妓がその労働の対価として金銭を受け取っていたのであれば、置屋側は舞妓を給与所得者として、年末調整をして源泉徴収票を本人に渡すのが正しい姿ではないか」と指摘する。

「舞妓が置屋やお茶屋の指示のもと、時間と場所を管理されて宴席でサービスを提供しているという勤務実態を考えると、“個人事業主”ではなく、雇用主のもとで働く“労働者”にあたる可能性が高い。

 これまで置屋やお茶屋は研修の場であり、舞妓は修業の身であるという理由で労働基準法の適用外とされていましたが、労働実態に加えて、その労働に申告すべき所得が発生していたのなら、労働者ではないという言い逃れはもう難しいのではないか」