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「舞妓を辞めるとき“身に覚えのない確定申告書”を渡された。役所の人も『あー…』って」花街に蔓延する“グレーすぎる労働実態”《弁護士も「言い逃れはもう難しい」》

「舞妓を辞めるとき“身に覚えのない確定申告書”を渡された。役所の人も『あー…』って」花街に蔓延する“グレーすぎる労働実態”《弁護士も「言い逃れはもう難しい」》

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舞妓が労働者となると「風営法違反になるのでは」

 労働基準法の「労働者」の判断基準についてまとめられた「労働基準法研究会報告」によると、労働基準法が適用される「労働者」であるかどうかは「指揮監督下の労働か」「報酬が提供された労務か」の2点によって判断されるという。

 このうち、「指揮監督下の労働か」については仕事の依頼に対し拒否権がないことや、時間や場所を指定されているかが判断基準となっている。

 Aさんの語った勤務実態、そして置屋が提出したとする確定申告書で「収入」が記されていることを考えると、舞妓は「労働者」にあたるのではないか。

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「舞妓が労働者であるならば、客へお酌をさせ、またそれが深夜まで及ぶことは、風俗営業法の『未成年使用禁止規定』や労働基準法の『未成年者の保護規定』に反します。未成年を深夜労働させた場合、事業者は、風営法では1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、労基法では6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科せられます」(同前)

お座敷遊びをする桐貴さん(桐貴さん提供)

 また、先日政府は国際労働機関の定める国際労働基準の『強制労働の廃止に関する条約』を批准した。この条約では、教育の過程を利用した強制労働を禁じたもので、政府は外国人実習生への労働搾取に対する批判を受けて条約の批准に踏み切ったようだ。

「舞妓の労働実態も『教育の過程を利用した強制労働』にあたる可能性があります。もし外国人実習生への待遇が改善され、舞妓の労働問題が放置されることになれば、大きな矛盾を抱えることになります」(同前)

花街の犠牲になる若者をこれ以上増やさないために

 紆余曲折ありながらも、Aさんは現在、充実した日々を送っているという。しかし、Aさんは「もう、あの日々には戻りたくない」と語る。

※写真はイメージです ©iStock.com

「昔からずっとやりたかった仕事に就けて、今はとても楽しいです。京都以外の花街では、舞妓の募集年齢を18歳以上にしている街や、給料制を取り入れ、置屋暮らしを強要しない街もあるようです。未成年の舞妓を搾取しなくても、伝統文化を守ることができるんです。

 京都の花街のブラックな隠蔽体質を変えなければ、舞妓の待遇は改善されず、私や桐貴さんのような思いをして傷つく舞妓はんは後を絶たないでしょう。これ以上花街の犠牲になる若者を見たくはありません。時期が来たら私ももう少し詳しいお話をさせていただきたいと思っています」

 桐貴さんの告発を「そのような行為は一切なかった」と断じたおおきに財団に見解を尋ねるべく質問状を送ったところ、「個々の置屋の関わることなので、回答を差し控えます」という返答だった。

 映画界の性的被害を女性たちが告発した#MeToo運動は、業界を動かし、健全化を促進させた。今、同じように元舞妓たちの中に#MeTooの声が広がりつつある。その声を花街はいつまで無視し続けるのだろうか。

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