2月17日、投資会社「エクシア合同会社」の代表ら幹部が、違法な勧誘で出資を募ったとして259人の出資者が32億円あまりの損害賠償などを求め、東京地裁に提訴したと報じられた。
訴状によると「エクシア合同会社」は投資事業で「最大月間返戻率37.96%」など高い利益をうたって社員権を購入する名目で出資を募っていたが、実際には投資そのものの実態が疑われるのだという。
「エクシア合同会社」について、文春オンラインではその実態についてたびたび報じてきた。今回改めて、当時の記事を再公開する(初出 2022年10月22日 年齢、肩書等は当時のまま)。
◆
「こちらは東京地方裁判所です。証拠保全の執行に来ました」
ガラス張りの外観に高さ250メートルの威容。東京・六本木の街中でもひときわ目立つ「住友不動産六本木グランドタワー」15階に入居する「エクシア合同会社」(以下、エクシア)の受付に朗々とした声が響いたのは10月3日12時30分のことだった。
声の主は東京地方裁判所民事第8部の裁判官。「証拠保全」とは、原告側の申請に基づき、裁判所の認可を経た上で裁判官が執行官となり、原告弁護士とともに現地に赴いて被告側の手元にある証拠などを写真などに収めて記録することだ。医療訴訟の現場などで、病院側のカルテの改竄を未然に防ぐために、原告となる患者側からなされることが多い。
エクシアは現在、出資金の返還を求める数件の訴えを抱えている。今回の証拠保全の執行は、民事裁判の過程で生じた手続きだ。
事前に実行日時などは通知されているため、その気になれば証拠改竄をすることも、十分な対応策を練る時間もある。つまり「証拠保全」が抜き打ちで行われることはない。ゆえに、証拠を差し押さえられる側もそれなりの準備をしてから実行日を迎えるのが普通だ。当然、裁判官による証拠保全作業はさしたる抵抗もなく、粛々と進むのが通常である。
しかし。
受付の従業員は「対応をしておりますので」と答えるばかり
結論からいえば、エクシアは東京地方裁判所の裁判官による証拠保全手続きを拒否した。裁判官が何度も証拠保全の趣旨を説明し、対応を求めようとしても、受付の従業員は「対応をしておりますので」と答えるばかり。そのうち従業員は無言でカメラを取り出し、受付のデスクの上に置いて証拠保全に立ち会う関係者を動画に収め始めた。
裁判官が幾度となく法律にのっとった執行であることを説明しても、受付は「対応をしていますので」の一点張りだった。業を煮やした裁判官は「東京地裁の✕✕です。事前の通知をしておりますよ。担当者を出しなさい」とやや口調を強め、自らの身分を強調するように自分の名刺をカメラのレンズに近づけた。