コロナ禍で火がついた「ペットブーム」。2021年に一般社団法人ペットフード協会が発表した調査結果によると、1年以内に新たにペットとして家庭に迎え入れられた犬猫の頭数は、2019年に比べ2020年に約132,000頭、2021年に約142,000頭が増加しているという。
愛くるしい動物たちが人々を癒す一方、無責任な飼育によるトラブルも社会問題化している。NPO法人にゃいるどはーと代表の東江ルミ子さんはこう語る。
「何匹から“多頭”という定義がないので、数字で多頭飼育崩壊を語るのは難しいのですが、明らかにここ数年で増えています。体感的には前年の倍くらいで増えているでしょうか……。これまで何度もレスキューに行きましたが、現場は壮絶です。猫が糞尿まみれになっていたことや、10匹単位で死んでいたケースもありました」
猫のトイレ用の砂がいたるところに…
東京都八王子市で犬2匹と猫6匹と暮らすA子さんも同様のトラブルを抱えていた。生活保護を受けながら生活しており、経済的な理由などからペットを手放すことになった。
2月14日、動物保護団体のNPOがA子さんの飼っている秋田犬と猫4匹を引き取ることになった。記者はその現場に立ち会った。
A子さんは2LDKの賃貸マンションで一人暮らしをしている。寝室である和室には服が床に散らかっており、足の踏み場もない。障子の下半分は破れ、猫が爪とぎをしたのか壁紙がところどころはがれている。猫のトイレ用の砂がいたるところに散らばっており、床にはホコリが溜まっている。
A子さんはこのマンションに十数年住んでいたが、家賃や光熱費を数カ月滞納したために管理会社から退去を求められ、転居を余儀なくされた。
「少し前までは牛丼屋で働いたり、夜の仕事をしたりしていましたが、体調もよくなくあまり仕事ができなくて……。自分の甘えもあると思いますが、今は生活保護で暮らしていて、自己破産の手続きも始めました。この状況で8匹のペットと暮らしていくのは難しいので、NPOに保護を依頼しました」
「かわいそう」「助けたい」という気持ちから…
A子さんは8匹のペットのうち、秋田犬と猫4匹を手放すことを決めた。ほかの犬や猫は、A子さんやA子さんの娘が継続して飼育していくという。
一体なぜ、たくさんのペットを抱えることになってしまったのか――。A子さんは語る。
「動物を助けたいという気持ちで20年以上前から犬や猫などの保護活動を始めました。スーパーで猫の里親を募集しているポスターを見ると、かわいそうになってしまって……。シングルマザーの私は当時から生活保護を受けたり、自己破産の手続きをしたりと生活は苦しかったですが、なんとかしのいできました。
秋田犬はインターネットの掲示板で里親を募集していると知り、生活保護の身ではありましたが、数カ月前に飼い始めました。ですが、家賃も払えなくなってしまい、引っ越しをするにあたってどうしても飼い続けられなくなってしまいました」