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生活困窮世帯の多頭飼育に対する行政の対応は?

 生活保護を受給しながらペットを飼うことは法律上、問題ないのだろうか。厚生労働省によると、生活保護法上、ペットの有無は受給条件に該当しないという。担当者は次のように説明する。

「生活保護の受給申請にあたり、ペットについては特に規定はありません。ただ、生活保護は『最低限度の生活』を保障するもので、受給者が生活を維持していくためのものです。このため、ペットにかかる費用は生活保護費の範囲内で捻出するしかなく、飼育費の上乗せはありません。多頭飼育や飼育の継続が困難になるなどの問題が発生した場合には、自治体が指導することになります」

 

 経済的に困窮している世帯で、多頭飼育が発生した場合、どのような対応をしているのだろうか。八王子市役所の職員はこう話す。

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「動物が精神的なよりどころになる場合もあるので、生活保護受給者だからといってペットを飼わないよう指導することはありません。また、受給者に対してペットの有無を聞くこともないです。年に数回、受給者宅にケースワーカーが訪問して初めてペットがいることが分かることもあります。そういった中で、多頭飼育崩壊が起きている場合は指導すると思いますが、八王子市で過去にそういったケースは思い当たりません」

 

「面倒をみることができる頭数を考えて」

 前出のNPO法人にゃいるどはーと代表の東江ルミ子さんによると、A子さんのように生活に困窮しているのにも関わらず管理できない頭数を飼ってしまうケースは多く、保護の依頼が後を絶たないという。

「『お金がない』という理由で、私たちのような団体にペットの保護を依頼し、医療費なども支払わず丸投げしてくるケースが本当に多いです。『殺処分がかわいそうだから』と建前は立派ですが、自分自身の責任を放棄し、命を見捨てていることに何ら変わりはありません。

『ペットを飼わないで』とは言いませんが、とにかくまずは面倒をみることができる頭数を考えてほしい。それが大前提です。犬や猫は喋ることができませんから、どれだけ劣悪な環境でも文句は言いません。それに甘えてはいけないのです。厳しいことを言うようですが、自分自身の管理ができない人に動物の管理はできません」

 

 飼い主から手放されてしまった秋田犬。奇しくもこの日はバレンタインデーで、6歳の誕生日だった。

 A子さんは自身のペットが保護団体の車に乗り込むのを見送ったあと、涙ながらにこう語った。

「本当に犬と猫には申し訳ない気持ちでいっぱいです……。これから生活を立て直して、二度とこういうことがないように生きていきます」