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生活保護で多頭飼育

生活保護で多頭飼育

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生活困窮者が5割を占める「アニマルホーダー」

 別の場所で暮らすA子さんの娘も、保護の現場に立ち会った。娘はこう明かす。

「私が中学生のころも、ただでさえ生活が苦しいのにペットが増えていくので不安でした。昔から母は片づけられないし、物をため込んでしまう性格で……。育てられる人が育てたほうがいいと母に伝えましたが、聞く耳を持ってもらえませんでした」

 経済的にも生活が大変な中で、ペットの数が多いと感じることはなかったのだろうか。A子さんは言葉少なに答えた。

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「行き場のない犬や猫がかわいそうだと思う気持ちと、大家族にあこがれがあって、どこか寂しい気持ちがあったんだと思います……」

雑然とした部屋 ©文藝春秋

 A子さんのような多頭飼育者は「アニマルホーダー」ともいわれる。欧米で「ホーダー」とは、ゴミや物を捨てられずに集めてしまう精神疾患を持つ人に使われる用語で、適切に管理できない頭数の動物を抱えてしまう人のことをアニマルホーダーと呼ぶ。アニマルホーダーの中には、不衛生な環境が与える影響のほか、悪化する動物の健康状態を認識できないケースもある。

 保護団体によると、A子さんの犬と猫はおおむね体調に問題はなかったという。だが、秋田犬の爪は外側に伸びきっており、十分な散歩がされていなかったとみられるという。今後、避妊手術などを経て、適切な飼育環境で育てられる人たちの元へ届けられる予定だ。

A子さんはこの自宅で犬2匹と猫6匹と暮らしてきた ©文藝春秋

 経済的に困窮しているのにもかかわらず、多頭飼育に陥ってしまうのはA子さんだけではない。

 環境省が2019年、自治体に対して多頭飼育者の生活についてアンケート調査を実施したところ、経済的に困窮しているかを問う設問について、「あてはまらない」「あまりあてはまらない」が2割程度だったのに対し、「あてはまる」「ややあてはまる」が全体の53%を占めた。この調査で、困窮状態にある人のうち 4 割が生活保護受給者であることもわかった。