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輸入そば粉の価格が暴騰、国産は余り気味…「日本のそば業界」が直面している“問題”とは《6次産業化の達人に聞く》

輸入そば粉の価格が暴騰、国産は余り気味…「日本のそば業界」が直面している“問題”とは《6次産業化の達人に聞く》

2023/02/28
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 神奈川県農政課の新美さんの話によれば、石井さんの場合、地域特産物の生産・加工の分野で卓越した技術や能力を持っており、また、全国でも200名程度しかいないことから、認定のハードルは非常に高く、意義があるものと考えているとのこと。 

11人のマイスター認定者の記念写真
受賞される石井社長と雨宮宏司理事長

 リアルに実施される表彰式は3年ぶりとか。当協会雨宮宏司理事長、農水省関係者の挨拶に続き、マイスター認定者11人の表彰式が厳かに行われた。その後、石井社長は壇上に上がり、いつものマシンガントークで丹沢そばの歴史を振り返った。その一部を要約して紹介しようと思う。多くのそば生産農家やそば屋と全く異なる歴史があることがなかなか面白い。

石井社長のスピーチはいつものマシンガントークで

丹沢そばの歴史

「丹沢そば」は昭和34(1959)年、製麺会社としてそばの生産を先代が開始した。その後そば屋を平成5(1993)年に併設開業した。

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 経営危機の中、後を継いだ石井勝孝社長は、「よそ様のそば粉を使っていては自分が追い求める味を安定的に供給できない」ことを痛感する。

 平成12(2000)年頃からそばの栽培を試行錯誤しながら始め、経営が軌道にのった平成22(2010)年、秦野の横野地区、三廻部地区などに広大な土地を取得し、そばの作付けを本格的に開始。耕作放棄地も活用し約6haの農地でそばを栽培。しかも春・夏・秋収穫の三期作を可能にした。そして、地域の名水を用いた「かながわの名産100選」に選ばれた乾麺を発売することになる。つまり、そば栽培から製粉、製麺、蕎麦店経営まで一貫した6次産業化を実践している。

三廻部地区のそば畑の様子
自前の製粉工場

 さらに平成29(2017)年から「丹沢そば農業アカデミー」を開催し、新規就農希望者への研修を積極的に実施 。

 令和3(2021)年には農業経営を法人(有限会社石庄丹沢そば茶屋本舗)へ移行し、後進の指導に尽力している。今回のマイスター認定はこうした活動が総合的に評価されたと考えられるが、その認定への本当の背景は下記のようなことがあると推測する。

アカデミー生徒による収穫の様子

キーワードは「大規模経営」「6次産業化」

 今回の受賞のキーワードはやはり、そばの「大規模経営」「6次産業化」ということに尽きる。

 北海道にはもっと大規模なそば生産農家はたくさんあるが、関東エリアでは少ない。どこも小規模生産農家がほとんど。