モノを集めるという行為は、人間の根源的な欲求なのかもしれない。美術品から骨董、各種グッズや身の回りの些細なモノに至るまで集める人が存在し、それぞれ独自のコレクションを築きあげている。
その蒐集欲がある一定のレベルを超え、もはやライフワークとなりはじめたら、考えなければならないのは膨大なモノたちの「行き先」だ。コレクターが亡くなったら、その生涯をかけたコレクションはどうなってしまうのか。
いまこの瞬間もモノを集めつづけている蒐集家たちは将来のことをどう考えているのかなど、コレクターの終活事情について聞いてみた。
遺族はコレクションに関心がないことが多い
自分のお墓のことよりも、生涯をかけて集めたモノたちの行き先のほうが気になる……。自他共に蒐集家と認める人たちにとっては、まさに終活といえる切実な問題だ。
コレクターが亡くなったあと、遺族がコレクションを公的な施設に寄贈することもあるというが、それはすでに価値が定まっているジャンルにだけ許されること。趣味系やアニメ・漫画グッズ、B級コレクションなどは価値が定まらないので、行き先がないのだ。
「ご家族はコレクターが集めているモノに関心がないことも多い。なので、コレクターが亡くなると遺族の方がそのまま廃棄してしまったり、適当に選んだ骨董店やリサイクルショップなどに売ってしまうんです。単身者がコレクションに埋もれるように亡くなっていて、特殊清掃業者がすべて処分したという話も聞きます」
そう話すのは、趣味系の雑誌企画などを手掛け、多くのコレクターを取材してきた編集者の染谷五郎氏(仮名)だ。
そこで、頻繁に行われるのが、コレクター同士の「相互扶助」だ。
「コレクター仲間で『俺が死んだらこれはお前にやる』という申し合わせをしておくんです。正式に紙に書いて契約する、ということにはならないですけど、お互いにそう言い合うことで安心するのかもしれないですね」(染谷さん・以下同)
実際に、亡くなったコレクターの形見分けというかたちで、故人を偲ぶ人たちが集まって、それぞれが思い入れのあるモノを持ち帰るということはあるそうだ。
「生前の友人たちが適正価格で買い取ったり、イベントやオークションで売るなどして、その収益金を遺族に渡すというパターンもありますね」