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「関心のない遺族が廃棄」「『処分を任された』とウソをつき、持ち去ってしまう事件も…」コレクターが“終活”を考えるとき

「関心のない遺族が廃棄」「『処分を任された』とウソをつき、持ち去ってしまう事件も…」コレクターが“終活”を考えるとき

2023/03/12
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勝手にコレクションを回収し……詐欺のような事件も

 まるで倒産企業の清算事業のよう。しかし、これがただの口約束だとトラブルの元にもなってしまう。有名コレクターの遺族の元にふらりと現れて「コレクションの処分は任せてもらってます」と言葉巧みに近づき、勝手にコレクションを回収してどこかに消えてしまうという詐欺のような事件も起きているそうだ。

「多くのコレクターは死んだあとのことなど考えず、それよりもいま欲しいモノを手に入れることを優先する。現状では、そこまで真剣に終活を考えてる人は少ないんじゃないですかね」

 オモチャコレクターの松永葵さん(仮名)は、いろいろな事情が重なり、コレクターとしての終活を考え始めたという。

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「僕は50歳を超えたこともあって、いま少しずつコレクションを手放しているところですね。オモチャは限定品が多くて、しかもお1人様3個までといわれると、保存用、鑑賞用、転売用と、とりあえず3個買ってしまうんですよ。それで20年後に売ろうかなと思って保存しておくんですけど、あれ、20年後って僕いくつだろうとかリアルに考えるようになりましたね。

 そもそも、20年経ってもそのオモチャに価値があるかどうかわからないし、単純に費用対効果として20年も大事に保存しておくのに見合うだけの価格になるのか、とか……。昔はそんなことまったく考えてなかったですけど、最近はもう将来を見越して余計に買うことは止めました」(松永さん・以下同)

天井近くまで積み上がった衣装ケースの中身も全て玩具(松永さん提供)
地震などの衝撃で崩れることもあるという(松永さん提供)

 松永さんがオモチャを蒐集することに消極的になったのは年齢だけが理由ではない。コレクターとしてのアイデンティティを揺るがすような出来事が立てつづけに起こったことが原因だという。

「僕の古くからの友達で、外国人のコレクターがいるんですよ。一緒に海外で買いまわったり、日本で売ってるオモチャを買って送ったりとか、お互いの国の利点を生かしてトレードしてたんですけど、その彼がとつぜん亡くなったんです。

 その頃に1号ずつ郵送で届く冊子の付録をぜんぶ集めて組み立てるとロボットになるという分冊の週刊百科を代理で購読して、彼の元に転送してたんですけど、これは今後どうしたらいいんだろう、と。ウチには毎週届くけど、これをオモチャに興味のない海外のご遺族の元に送り続けるのは、意味あるのかなって。

 これが逆に自分が死んでたらどうなっただろうって、ちょっと現実的になったんですよね」

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