死体が発見された周辺には争った形跡がなかった
2月26日、さいたま市桜区の畑で頭と前脚のない猫の死骸が土に埋められているのが見つかった。畑の所有者は「2日前の午前中まではなにもなかった」と証言している。死骸発見現場の畑近くには、狂気の犠牲になった猫を悼む献花台も設置され、付近を通る人が写真を撮ったり手を合わせていた。
だが、事件はこれだけにとどまらない。同日午後5時過ぎには畑から300メートルほど離れた荒川沿いの市道で、猫の頭と前脚の部分が発見された。警察の発表によれば黒と茶色が混ざった毛並の猫の死骸だったという。この猫の死骸を見かけた男性が言う。
「26日の13時くらいに犬の散歩をしていた時です。川のほうに斜面を下ったあたりにぐたっと横たわる猫を見つけました。寝ているのかなと思って近づいてみると、肩から足の付け根にかけて縦に切断された死体でした。最初はカラスと喧嘩でもして死んだのかとも思いました」
無残な猫の姿に眉をひそめたが、男性はあることに気づいたという。
「でも、動物同士のケンカにしては、近くに争った形跡がなかったんですよね。あれだけ深く体が傷ついたら血もたくさん流れたろうに、周囲には血の流れた跡はなかった。ああ、誰かが運んできたんだと思いました。午前中に同じ場所を散歩した時は見つけられなかったので、9時から13時の間に置かれたのだと思います。死んだ猫は1歳未満くらいの小さな野良猫。黒と茶色の毛並で、この近くでよく見かけましたよ。ガリガリに痩せていたのでたまにエサをあげてたんだけどね。本当に可哀想ですよ」
「酒鬼薔薇事件」を思い出させる「猫殺し」
猫を殺し、その死骸をバラバラにして捨てるのは言うまでもなく犯罪だ。警察は動物愛護法違反を視野に容疑者の特定を急いでいる。
「猫殺し」は否応なくあの事件を思い出す。1997年の神戸連続児童殺傷事件、通称「酒鬼薔薇事件」を起こした少年Aは、子供を殺めるに至る前に何匹もの猫を手にかけていた。猫を殺し、その死体を解体している内に衝動がエスカレートしたとされる。あの惨劇を思い起こすのは自然なことだ。近隣に住む男性が語る。
「警察が聞き込みに来て、うちの近くで猫殺しがあったことを知らされました。刑事さんが『サカキバラ事件って知ってますか』と聞くので、もちろん私も知っていますよと答えました。『昔そういうことがあったのでこうやって捜査しているんです』と言ってましたよ」
不安は住民だけでなく警察にまで広がっている。狂気が亢進しないことを祈るばかりだ。
しかし、住民らの不安は的中してしまう。3月1日、猫殺しの相次いださいたま市のすぐそばの戸田市の中学校に10代の少年が刃物を持って侵入。60代の教員を切りつけて大けがをさせ、警察に逮捕されるという事件が起こった。
調べに対し少年は「猫殺しも自分がやった」と、近隣住民を震撼させた猫殺しへの関与をほのめかしている。捜査の進展が心から待たれる。
◆◆◆
「文春オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレス、または「文春くん公式ツイッター」のDMまで情報をお寄せ下さい。
メールアドレス:sbdigital@bunshun.co.jp
文春くん公式ツイッター:https://twitter.com/bunshunho2386
その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。