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「商売には向いてない」「それを悟った」

――ガッツさんは世界タイトルを5度防衛した後、1978年にボクサーを引退します。その後はスナック、喫茶店、サパークラブなどいろんな商売に手を出しますが、いずれも失敗してしまう。

ガッツ スナックは、任せていた夫妻が突然やめたと思ったら、100メートル先に店を開いたのよ。こっちは給料をいくら払っているか分かるから「なんであの給料でお店を出せるのよ」と思うけど、たぶん売り上げからお金を抜いていたわけよ。

 

――その夫婦に対して怒ったりはしなかったのですか。

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ガッツ 怒ってない。普通は怒るかもわからないけど、証拠がないでしょ。あくまで「たぶん」お金を抜いているということだから。そういうところはいやらしくないんだよね。

 サパークラブをやった時もそう。お店に来てくれた知り合いが「ガッツさん、行ったよ」って連絡くれるわけだ。でも店の売り上げには入ってねえんだから。どうなってるんだと。でもこっちからは言わない。金融もやったよ。300万円だ、500万円だって働いている奴がみんな金を借りて、そこから返ってこねえんだから。

 でも、そいつらを責めているわけじゃない。怒ることは自分に負けてんだからね。そういうのに付き合ってること自体がその人間のラベルだから。レベルじゃないラベル。ただ商売には向いてないんじゃないの。管理ができないから。それを悟ったね。

借金は返すことで信用ができる

――ガッツさんとお金で言えば、1990年に監督、製作総指揮を務めた映画「カンバック」や1996年の衆院選出馬などで億単位の借金をされてますね。

ガッツ そう。そこら辺がダメなところなんだ。自分でやるには金ねえんだから借金するしかないよね。借金は最大で2億~3億円じゃないの。金は貸してくれるんですよ、信用があるから。 ただ借りたものは返さなくちゃいけない。俺は全部返してね。3億の借金も5~6年で返したんじゃないかな。

 

――自伝では衆院選落選の際には、3億円の借金を抱え自殺も考えたとありました。

ガッツ 自殺も考えたことがあるよ。でも村一番の貧乏人がここまで這い上がってきたんだから。そう考えると昔のことを思い起こせば乗り切ることはできるよね。

――ガッツさんはボクシング時代も敗北から立ち上がってきましたが、借金でもKOされずきちんと立ち上がってくるところがすごいです。

ガッツ 借りたものは返さなくちゃいけない。別のところから借金しても返すんですよ。それでいいんですよ。返すことで信用ができるわけ。

 そうしたら今度はさっき借金を返した人からお金を借りて別の借金を返す。ボクシングでいうフットワークだよね。 左右左右って。今まで100万円借りてた人には「50万、もう1回貸してくれ」ってね。それが世の中の渡り方じゃないの。逆に約束を破っちゃうと行き詰まっちゃう。

 いろんな人から何億円って借金をしていて、借金も返さないでテレビに出てバカなことやったら貸した人から怒られるよ。でも俺は約束を破ってないから。だから平気なの。

写真=山元茂樹/文藝春秋 

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