第65回ブルーリボン賞の主演女優賞に映画「PLAN 75」で輝いた倍賞千恵子。史上最年長となる81歳での受賞に「びっくりしました。私って、そんな歳なんだって」とジョークを交えて喜びを語った。

「75歳から生死が選択できる近未来を描いた映画で、倍賞は人生に絶望した女性の心情を繊細な演技で表現している」(映画記者)

ウォーキングとストレッチが日課だという倍賞千恵子 ©文藝春秋

 東京生まれの倍賞は5人きょうだいの2番目で、小5からは北区滝野川の電話もテレビも無い長屋で育つ。児童合唱団から13歳で歌手デビューした後、都電の運転士だった父の薦めで松竹音楽舞踊学校に入学。首席で卒業し松竹歌劇団(SKD)に入団した直後、松竹が女優にスカウトした。

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「当初はSKDに戻りたいと、撮影後に江の島の海で『映画なんて大嫌い!』と叫んでいたとか」(同前)

「男はつらいよ」さくら役で悩む倍賞に、渥美清がかけた一言

 その後、21歳で発表した曲「下町の太陽」が大ヒット。1963年に山田洋次監督で映画化される。

「倍賞は下町の工場で働く女工役で、歌声でも観客を魅了し、紅白歌合戦に4年連続で出場。山田監督に庶民派女優としての才能を見出され、初期作品のほとんどで主演を務めた」(同前)

 69年から始まった「男はつらいよ」シリーズでは渥美清演じる寅さんの妹・さくら役で全50作に出演。“国民の妹”と呼ばれたが、

「本人はさくらのイメージが足枷になって悩んでいた。しかし渥美さんに『役者が街歩いてて、役名で呼びかけられるのはホメ言葉だから』と言われ、吹っ切れたそうです」(松竹関係者)