喫煙シーンは、作品の世界観やキャラクター設定に欠かせない要素であった。そもそも20歳未満の喫煙は禁止されているから、「タバコ=大人のもの」であり、タバコはキャラクターに「大人っぽさ」や「クールさ」を付与するアトリビュートとして用いられてきた。『ルパン三世』(モンキー・パンチ)の次元大介や、『ONE PIECE』(尾田栄一郎)のサンジなどがその代表格だろう。タバコは、“カッコよさ”の象徴だったのである。
だが今、エンターティンメント、特にマンガにおいて、タバコの役割が変化してきている。
タバコの持っていた“元来のイメージ”
タバコは元来、無頼派の象徴でもあり、『浦安鉄筋家族』シリーズ(浜岡賢治)の大鉄(父親)は極度のヘビースモーカーとしてキャラ付けされている。それとは反対に、『銀と金』(福本伸行)では、主人公の森田はギャンブル中毒者だが、タバコをポイ捨てしなかったり、吸い殻を拾ったりする描写があえて描き込まれている。
JTの広告コピー「あなたが気づけばマナーが変わる」を地でいくようなキャラクター性だが、この作品が連載されていた1992~1995年の世間の常識では、「ポイ捨てしない=正しい人物(主人公の資質)」の図式が成り立つほど、喫煙マナーは根づいていなかった。