集英社「週刊少年ジャンプ」2022年47号(10月24日発売)で、3年11カ月ぶりに連載が再開された『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)。11月4日には、2018年10月に発売された第36巻以来、4年ぶりとなる単行本第37巻が刊行された。SNS上にはマンガファンの喜びの声があふれ、あらためてファンの熱量の高さに驚かされるばかりだ。

 なぜ冨樫作品は、これほど多くのファンを惹きつけるのか。

 冨樫作品の特徴のひとつとして、ゲーム的要素が挙げられる。『幽☆遊☆白書』『レベルE』の頃のアシスタントによるエッセイマンガ『先生白書』(味野くにお)には、仕事の合間にアシスタントたちと一緒にゲームに興じる姿や、仕事場に『バーチャファイター2』の業務用筐体が置かれていた様子が描かれている。こうしたところからも、冨樫氏自身が無類のゲーム好きであることがうかがえるだろう。

ADVERTISEMENT

『HUNTER×HUNTER』1巻(冨樫義博 著、集英社)

「ゲーム好き」はデビュー作から顕著

 冨樫氏のビブリオグラフィを紐解くと、そうしたゲーム好きな性質は、デビュー作から顕著であるとわかる。「週刊少年ジャンプWinter Special」(1987年)に掲載された読切『とんだバースディプレゼント』(『狼なんて怖くない!! 冨樫義博短編集』収録)には、頭に浮かぶ映像を実際に体験しているかのように感じさせる「疑似体験マシーン」という、いわば現代のVR(仮想現実)機を先取りしたような機械が出てくる。この機械が暴走し、ゲーム「ドラゴンチェスト2」と現実の世界が結びついてしまい、主人公は街を元に戻すために悪の竜王を倒す冒険に出ることになる。

『先生白書』(味野くにお 著、イースト・プレス)

 また、出世作『幽☆遊☆白書』では、主人公と敵対する仙水ファミリーの一員として天沼月人が登場。天沼はTVゲームを現実化させる「遊熟者(ゲームマスター)」の能力者で、その領域(テリトリー)内では、ゲームのルールから逸脱した暴力行為は禁止され、主人公たちはおおいに苦しめられた。カルト的な人気を誇りアニメ化もされた『レベルE』では、ドグラ星の王子が遊戯用に購入した惑星を、RPG的な世界観に改造。地球の小学生5人を拉致し、「原色戦隊カラーレンジャー」を結成させ、自作のゲームを無理矢理プレイさせた。

「ゲームを現実化する」アイデアの集大成ともいえるのが、『HUNTER×HUNTER』の「グリードアイランド編」(13~18巻)である。主人公ゴンとキルアは、念能力者専用のゲーム「グリードアイランド」でカード100枚の収集を目指すことになるのだが、「No.1324 種の呪文」の回(14巻収録)では、呪文カードの説明文が4ページにもわたって続き、その設定の細かさに舌を巻いた読者も多いだろう。