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「俺が亡くなっても強く生きろよ」10歳で父と別れ…バスケ少年が“スラムダンク奨学金”に受かって躊躇した理由

「俺が亡くなっても強く生きろよ」10歳で父と別れ…バスケ少年が“スラムダンク奨学金”に受かって躊躇した理由

『スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ』より#4 須藤タイレル拓選手編

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 スラムダンク奨学金に受かったということは、そういう世界に入れるということ。それは嬉しかった。一方で、それは母と離れて生活するということを意味していた。

 父が亡くなってからひとりで自分を育ててくれた母に、須藤は心から感謝し、大切に思っていた。高校に3年間行かせてくれて、遠征などの費用も出してくれた。成長期の須藤が精神的に不安定だったときにも支えてくれた。おかげで選手としても、そして人間としても成長できた。

「お母さんは僕に残された唯一の親なので、一番大切な存在。大切にしなきゃなっていうのは思っています」

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 スラムダンク奨学金に応募するときに、母のもとを離れることに躊躇がなかったわけではない。しかし母は「拓の人生だから、自分のしたいようにしなさい」と、背中を押してくれた。その思いを受けての渡米だった。

「お母さんが笑顔で送り出してくれたので、自分も、引きずらずに気持ちよくアメリカに来ました」

 実はアメリカには異母兄姉が3人いる。まだ一度も会ったことはないが、以前から連絡は取り合っている。彼らと会うのはこの先の楽しみのひとつだという。

撮影/宮地陽子

 困難に直面したスラムダンク奨学生たちが見出した、挑戦することの意味や価値とは――。『スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ』は集英社より発売中。

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須藤タイレル拓(すどう・たいれる・たく)

 2001年4月6日生まれ、神奈川県出身。小学6年より横浜ビー・コルセアーズのユースチームに所属し、本格的にバスケットボールを始める。本牧中学校で県大会に出場。17年県大会上位常連校の横浜清風高校に入学。2年時と3年時に県大会2位。20年にスラムダンク奨学金第13期生としてセントトーマスモアスクールに入学。同校での名前は、父親の姓を使いTaku Youngblood。22年にNCAAディビジョンⅠ所属のノーザンイリノイ大学へ進学。ガード、フォワード。183cm、82kg。

スラムダンク奨学生インタビュー その先の世界へ

宮地 陽子 ,伊藤 亮

集英社

2023年1月26日 発売

「俺が亡くなっても強く生きろよ」10歳で父と別れ…バスケ少年が“スラムダンク奨学金”に受かって躊躇した理由

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