三村氏の顔を立てつつ、変わりゆくTBSラジオの社風に危機感を表明するなかなかの名文であり、経営陣が全社員集会で発表するのをためらったのも仕方ない。“隠蔽”をとがめられた上層部は、翌11月の緊急全社員集会で入江氏の“箴言”を社員に向けて公表した。
前社長の忠言に三村社長は…
「入江さんのメッセージの代読は三村社長自身がつとめたのですが、7月の段階で公表しなかった理由を『失念していました』と事も無げに述べていました。社の先輩に対する不義理に謝罪もありませんでしたし、ただ機械的に朗読しただけ。会社に対する忠言であることは聞いていてすぐ分かりましたが、当の三村社長は一切感想を言わず、何事もなかったかのように終わりました」
10月の全社員集会で動揺を隠せなかった総務系の社員とは、かつて『深夜の馬鹿力』や『伊集院光とらじおと』でプロデューサーを務めており、ラジオで毎週のように伊集院が名前を呼んでいた名物局員でもある。
「伊集院より出世をとった」
「彼はいまや完全に三村社長側につき、伊集院さんとは一線を引いています。勘のいいリスナーなら、ある頃から伊集院さんが彼の名前を一切、口にしなくなったと気付いていたでしょう。彼は、2018年に編成局の制作部担当部長から営業統括局の営業推進部長になり、昨年には執行役員にまで上り詰めました。『らじおと』が終わる時、伊集院さんが上層部から話す内容を提案されたと番組で告白していました。その時は遠巻きに見ていたようですが、伊集院さんがそのような行為を嫌うと誰よりも彼が知っているはずです。それでも、現在の上層部にはイエスとしか言えない。社内では、『盟友・伊集院との絆より出世を取った』と言われています。会社員の生き方の1つかもしれませんが、冷めた目で見ている局員も少なくありません」
伊集院の裏番組への出演を三村社長は是としたのか。前社長のメッセージの封印は意図的だったのか。TBSラジオに事実確認をしたところ、期日までに回答はなかった。
ゴマスリが蔓延る――入江氏の危惧がまさに現実のものとなりつつある。聞く耳を持たないラジオ局が、再生することなどあり得るだろうか。