(3)加藤勝信厚生労働相が閣議後の記者会見で「厳正に対処する」と表明(第八報)
加藤厚労相は滝山病院の院長が以前、保険医を取り消された後で「再登録」になった件について質問されると、「個別事案になるから差し控えたい」と回答を避けた。その上で「引き続き規定等に則って適切に対応していきたい」とコメントした。
この部分は、ニュースとしてはTBS「news23」が初めて「滝山病院」について特集したVTRの一部として放送された。滝山病院に入院していた弟が、5年前に“死亡退院”したという女性に番組が独自にインタビューした。相原弁護士にも独自に取材し、弁護士が提供した病院内の暴力・暴言の映像や音声、画像などを交えながら報道した。
弟が“死亡退院”したという女性は、病状の急変の知らせを受けて病院にかけつけると、弟の目の周りに見たことがない赤い“あざ”を見つけた。
目のあたりをかなり強く殴られたときにできるような“あざ”。病院関係者はいつそれがついたのか尋ねても「わからない」と繰り返す。弟の診察記録などにも“あざ”のことは記述されていない。弟が亡くなったのは“あざ”を見つけた2週間後のことで、病院が女性に伝えてきた死因は「心筋梗塞」だったという。
注目されるのは、今回、TBSが民放テレビの中で初めて、滝山病院の院長が以前、2001年に埼玉県で問題となった朝倉病院の院長でもあった事実を報道したことだ。当時の映像を放映して、“違法な身体拘束”や数多くの“患者の不審死”が社会問題になり、診療報酬の不正請求で保険医を取り消されたことを伝えた。
滝山病院の元非常勤看護師は「院長が診療報酬に偏重して過度な医療提供を行う傾向がある印象」を持ったと証言する。「わずかな血液検査の異常値も『心不全』と診断し過剰に抗凝固薬を投与する。最大の虐待は過剰な医療提供であると感じる」と語った。
滝山病院の院長については、音声も映像もなく、氏名を示すことなく「院長」とだけ表現し、すべて匿名で報道していた。
VTRからスタジオに下りると、生活保護行政が滝山病院を頼りにする構図が図解で示され、ETV特集を簡単にまとめたようなかたちで説明した。全体で14分弱の特集だ。
「後追い報道」ではあるが、TBSは堅実にETV特集をなぞるようにして報道した。病院長ではない、医療法人の責任者である理事長のコメントを取ったテレビ朝日と方向性は違うものの、「スクープ報道」したETV特集にリスペクトを示しながらも「独自性」を出そうというフェアな報道姿勢に映る。
なかでも原因が不明の赤い“あざ”を残したまま病院内で死亡した弟がいる女性のケースは、暴力と死因との因果関係をうかがわせるもので、今後、関係機関による徹底した調査や検証が求められる。