「死にたくないんです」と話していた幸田さんだが、弁護士との面会から1か月も経たないうちに病院内で謎の死を遂げた。病院側の診断は「急性心不全」。原因は不詳とされ、享年46だった。
暴力、暴言、虐待、身体拘束、適切な治療や看護の拒否など、患者にとっては「恐怖」ばかりが支配するばかりの病院内の実態が浮かび上がった。
番組が入手した10年間1498人の患者のリスト
リストにある患者の記録では、“死亡退院”が全体の78%を占めていた。異常といえるほどの高さだ。記録を分析して、患者たちが滝山病院に送り込まれる背景を類型化した。
まずは精神疾患や認知症など負担が重い患者を預けたいという「家族」の意思。
そして、滝山病院は人工透析治療もできるという内科疾患と精神疾患との合併症に対応する数少ない医療機関だが、患者を診る受け皿が必要な「他の精神科病院」の都合もあった。
さらに精神疾患で手がかかりがちな生活保護を受給する人を送り込もうとする「生活保護行政」。リストにある患者の半数以上が生活保護受給者で、各自治体が滝山病院を頼みにしてきた構図が見える。
それぞれにとって、滝山病院が都合のいい「必要悪」になってきた実態がある。
(病院スタッフ)
「いらないものを捨てるみたいな感じで行き場のない人たちのたまり場みたいな。だからそこに入れられているってことは求めてる方たちもいらっしゃるってことが現実なんだろうな。必要悪じゃないですかね」
かつて院長を務めていた朝倉病院(廃院)での“前科”
滝山病院の“院長”が以前院長を務めた朝倉病院(廃院)では、連続不審死や身体拘束、診療報酬の不正請求の末の保険医取り消しの“前科”があった。朝倉病院での診療や投薬、身体拘束などと滝山病院での実態との共通点が浮かぶ。
この番組自体の「スクープ報道」としては、滝山病院の朝倉重延院長を登場させていることがある。病院内での画像や会話の音声などでこれまでの他社の報道にも登場していない“院長”の存在が強く浮かび上がる。
院長が患者の死について、笑いながら本音ともとれる言葉を語る音声が放送された。
院長(音声)「また一人逝っちゃったな。申し訳ないけど、そういう人ばかりなんだよな。まあしょうがないんだよな(院長の笑い声)」
院長「やっても助かって伸びるヤツもいれば、そのまま逝っちまう、そういうレベルなんだよな。根本的に治すなんてとんでもない話だよ。いつか死ぬ(院長の笑い声)」
取材を申し込むディレクターの問いかけを無視して、スポーツカータイプの高級外車を運転して去っていく院長の姿も。
問題の背景は暴力・暴言・虐待だけでなく、患者の人権をないがしろにする“院長”による病院運営とそれを厳しくチェックしない行政や精神医療の世界、その全体に責任があることを強く示唆する内容になっている。