「レイオフされたらされたで、パッケージ(特別退職金などの金銭的保証や優遇措置)が、基本給の4ヶ月から半年分はもらえる。だから、さっさと転職しちゃったほうが楽だったんじゃないかな。来年の今頃、もし営業成績が未達で切られたら、レイオフではないのでパッケージももらえないし、大損じゃないですか。なので、もう次の行き先について考え始めてますね」
「切るほうもつらいんですよ」
もはや切られるのも地獄、残るのも地獄な状況になっているのだが、切るほうは切るほうで、また別な意味で大変なようだ。
「ニュースでは切られる人のことばかりが取り上げられていますが、切るほうもつらいんですよ」
今回のレイオフの波の中、10人ほどクビを切ることになった役員のCさん(49歳・男性)は「切る側の事情」を、こう語る。
「もともと業績が上向いているときに、イケイケドンドンで、次から次に社員を増やしすぎたのが問題なんです。当時は、どれだけたくさん社員を採用できるかが管理職の評価指標のひとつにもなっていましたし、逆にヘッドカウント(部署ごとに割り当てられた人員数)を埋められなければ、管理職としての評価は下がります」
そうやって増やすだけ増やした社員だが、ひとたび本社がレイオフを決断すると、今度は真逆のことをしなくてはならなくなる。
「レイオフが決まると『お前の部門は、これだけの人数を切れ』と、具体的な数字が振られるんですよ。もちろん言われた人数分切らなくちゃいけないんですが、その基準はきちんと決まっています。大体、ある時点での成績や評価などで決めることが多いんですが、そこに一切の情は挟めないです。もっとも機械的にやらないと、こっちもメンタルやられちゃいますから……」
「面倒を見てきた部下」を切ることも
今回、Cさんがレイオフを宣告した社員には、入社当初からずっと面倒を見てきた部下も含まれているらしい。
「人事と一緒に面談をした時は、本当につらかったです。面談の前に、あらかじめ人事から、その社員の成績や評価などが記された書類を渡されるんですが『絶対に余計なことは言うな』と、何度も念を押されます。自分の意見やコメントは一切NG。それが訴訟リスクになり得るから。
たとえ『どうして自分なんですか?』って涙目になりながら聞かれても、書類に書かれていることしか言えないんです。『個人的には非常に残念だ』と言いたくても、それは感情と一緒に押し殺さなきゃいけない。実際に面談中の会話を録音している社員も多いですからね」
調子がいいときは「どんどん採れ」と言われていたのが、今は手のひらを返したように「どんどん切れ」と言われていることに、Cさんは「これも外資」と半ば諦観している。そして最後に、こう付け加えた。
「次は、そろそろ……自分の番でしょうね」