「なぁ、どっかにいいポジション空いてない?」

 ここ数ヶ月、会う人会う人から、そんな言葉を聞くことが多くなった。ご存知の通り、外資IT企業で行われているレイオフは深刻だ。筆者も20年ほど業界に身を置いており、何度もレイオフの波を経験しているが、今回ほど大規模なものは初めてである。

アメリカなら「再就職」は簡単だが…

 昨年3月にFRBが利上げを開始して以降、株価の大幅下落を受け、採用を凍結するIT企業が相次いだ。そして、ここ3ヶ月ほど大規模なレイオフを行っている。その数は“GAFAM”(Google、Apple、Meta、Amazon、Microsoftの総称。ただしAppleはレイオフを実施していない)だけで、5万人。まだまだ、この波は収まる気配がない。

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 今回、解雇された方はお気の毒としか言いようがないが、実はアメリカであれば、仮にレイオフの対象になったとしても、すぐ再就職できる可能性は高い。再就職にかかる期間は平均して2ヶ月程度だ。 

大手ITのリストラ事情をお届け。切る人間も、切られる人間も、そして切られなかった人間もつらい理由とは? ©getty

 一方で、日本の場合、再就職はなかなかうまくいかない。というのも、そもそも今の外資ITが「日本市場に積極投資する理由」が見当たらないからだ。コロナ禍で経済が冷えこんでいるのも原因だが、それ以上に円安の影響が大きい。

 昨年(2月)であれば、日本で1億円売り上げたら、本社では「約86万9500ドルの売上」として計上されていた(1ドル=115円として計算)。しかし、円安の今は「約74万ドルの売上」(1ドル=135円として計算)にしかならないのだ。

 つまり同じ金額を売り上げたとしても、実際は為替の影響で15%ほど低く計算しなければならない。ただでさえ売上が15%も目減りするような日本に対して、わざわざ増員という形で経営資源を投資するなんてことはあり得ない。

 そんな厳しい状況のなか、外資IT日本法人勤務の社員たちは、いつ飛んでくるかわからない「人事のメール」に戦々恐々としている。実際話を聞くと、あまりにも突然で、納得のいかない内容らしい。

「そのメールは、突然飛んできましたね。本当に何の前触れもありませんでした。まず人事と役員クラスの上司との面談が設定されるんです。そこで1時間くらいですかね……。自分がなぜレイオフの対象になったか、その理由について説明を受けます。理由と言っても、“直近の評価が低い”とか“パーフォーマンスが良くない”とか、そんな抽象的な話ばかりで、どれも納得できるものではありませんでした」