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「月の半分は風邪を引いていた」「『監督、もう声が出ません』と訴えても…」青学卒の元AV女優が語る、過酷すぎた業界の裏側

澁谷果歩さんインタビュー#2

genre : ニュース, 社会

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澁谷 入りたての頃はマネージャーが立ち会うこともありますが、慣れてくるとマネージャーが現場に来ることはあまりないです。メーカーの人もパッケージの写真を決めるために現場に来ることはありますが、すぐに帰ってしまいますね。現場では、監督のやりたい放題ということも少なくありません。

 休憩時間に監督やスタッフが体を触ってくることもありました。少しくらいなら我慢しますが、度が過ぎたセクハラだと事務所の人に報告します。

 でも、事務所の対応としては、「やめてください」とセクハラを断罪するのではなく、「次の撮影は優先的に入れてくださいね」と交渉するんです。私たち女優側も一般的な会社の感覚とはずれているから、それをおかしいと思わないんですよね。仕事が増えたラッキーみたいな。だから余計セクハラがなくならなかったんだと思います。

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「業界内のことは業界内で解決する」が暗黙のルール

――根本的な解決には至らないんですね。

澁谷 そうですね。何か問題が起こると、基本的にはお金で解決するイメージがあります。メーカーと事務所が話し合って、「じゃあ今回のギャラを少し上げておきます」とか、「撮影でおたくの女優をたくさん使いますね」とか。

 業界をやめてからそういう良くないところに気づきましたが、中にいるとそれが当たり前になるんですよね。

 

 昔、男優さんで業界内のルールを破った人がいて、業界の重鎮から「お金を払え」と、脅迫されたことがあったんです。男優が警察に相談したことで、その重鎮が逮捕されたんですが、男優はその後、撮影NGリストに入って、メジャーなメーカーからの仕事は一切無くなりました。もちろんルールを破った男優が悪いですが、業界内のことは業界内で解決するということが暗黙のルールなので、内部の問題が明るみに出ることがないんです。

 AV業界を辞めてから業界の内部について赤裸々に明かした本を執筆したんですが、ある女優さんから、「業界を悪く言うなんて敵だ」みたいに言われてしまって。特に悪く書いたわけではないんですが、業界内のことを外に漏らすことはあまりいいことだとされていないです。だからこそ根本的な解決が難しいんだと思います。