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「テレビでワイワイ話すだけでお金がもらえるの? なんてコスパがいいんだろう!」

井村 まず大学受験はコスパで選びました。学費はいずれ親に返そうと思っていたので、学費が安いという理由で国公立に決めました。群馬大学工学部を選んだのは2次試験がなく、センター試験と面接だけだったから。さらにセンター試験の物理の配点がなんと2倍だったんです。これなら苦手な国語と英語を捨てても、得意の物理と数学だけ勉強すれば受かると。受験勉強自体やりたくなかったので、最小限の投下コストで国立大を目指せる群大のコスパは際立ってよく見えました。

――そう考えると卒業後の「年収3万円の芸人」という進路は、会社勤めをするよりも、かなりコスパが悪かったのではないでしょうか?

井村 それが当時の自分にはコスパがいい世界に見えたんですよね。見通しはかなり甘かったんですが(笑)。水戸の実家に住んでいた頃は父の教育方針でお笑い番組を家で見せてもらえなかったので、大学生で1人暮らしをしてバラエティ番組を見たとき、「なんちゅう面白い世界があるんだ!」と視界がパーっと広がったんです。さらに言えば、「テレビでワイワイ話すだけでお金がもらえるの? なんてコスパがいいんだろう!」と。

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 もちろん簡単に売れる世界ではないとは思いましたが、若いゆえに成功する未来しか見えなかったんですね。群大工学部にはいくらでも就職先がありましたが、芸人の道が最もコスパがいい選択肢に見えてしまったんです。

©文藝春秋/撮影・末永裕樹

――芸人になってからもコスパを重視する生活を送ったんですか?

井村 養成所の選定もコスパで選びました。お笑いの事務所は吉本、ナベプロ、人力舎といくつかあり、どこを選ぶかから勝負は始まっているわけです。当時、養成所の授業料が1番高かったのは人力舎でしたが、売れることを目的とすると、逆にコスパが良いかもと思いました。なぜなら、ライバルと言える養成所の生徒数が少ないのに対して、すでに売れている先輩芸人の割合が高かったからです。さらに、おぎやはぎさんの芸風から感じられるように、仲間内の競争環境は緩く簡単にのしあがれそうとも考え、人力舎に決めました。

――結果はいかがでしたか?