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井村 全然ダメでしたね(笑)。そもそも、自分はおもろいんじゃないかと勘違いしていましたが、全くそんなことはなかった。横目でかなわないなと思っていた芸人は「笑いのためなら全てを捨てる」という雰囲気ですし、自分は全くそんな覚悟もできず……。入って2~3年で「才能ないな」と薄っすら感じていました。それが、「次も1回戦で落ちたら芸人辞めよう」とひそかに決心していた2011年、芸人3年目のキングオブコントで、なんと準決勝まで進んでしまった。事務所でも全く期待されてなかったので、まるでバブルの様相でした(笑)。

 が、その後すぐに弾けてしまい、ずるずると下落トレンドに。難しいのは、自分1人には才能はないけども、3人ならポテンシャルがあるのではないかと、諦めがつかなかったことです。結局、2017年の解散まで、丸10年芸人を続けることになりました。

©文藝春秋/撮影・末永裕樹

結婚したのもコスパ優先「僕を扶養にいれてください!」

――株式投資は芸人と並行して始められたのですか?

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井村 株は大学生の頃から生活費を切り詰めてやっていたのですが、準決勝に進む前年の2010年末頃から本格的に始めました。バイトを辞めて、「相場で飯を食う」と決意したんです。同じころに中小企業診断士の資格を取る勉強も始めましたね。

 すると、タイミングよく「アベノミクス相場」がやってきて、始めて2年後の2013年には株だけで1000万円稼げました。M-1の賞金も1000万円でリアリティのある金額でしたね。株で食っていけるかもしれないという実感が湧いたのもこの時です。2017年に1億を超えた時よりも感慨深かったですね。

――芸人を続ける傍ら、中小企業診断士の勉強とバイタリティがすごいですね。

井村 資格を取ろうと思ったのは、ちょうど2010年頃に出会った今の妻と結婚したくて、向こうの親に「こんなに難しい資格を持ってるなら大丈夫!」と安心させたかったからです。

 当時、共同生活はコスパがいいので、妻のマンションに転がり込んでいましたが、急にマンションが取り壊されることになり、立ち退きを迫られることになった。「これは結婚のチャンスだ!」と思いました。妻は公務員でしたし、自分が投資に失敗しても安泰。試算すると生活コストもさらに安くなる。結婚は圧倒的にコスパがいいと確信し、付き合って1年ぐらいで「僕を扶養にいれてください!」とプロポーズしたら「期間限定ならいいですよ」とOKしてくれたんです。つまり、裏返すと「ずっとヒモは許さんぞ」ということですね。実際に株で利益が出せたので、1年ぐらいで扶養は抜けられましたが、しばらく扶養してもらっていました……。

「日本中小企業大賞2022」の特別審査員を務めた井村さん(一番左。「中小企業からニッポンを元気にプロジェクト」HPより)

――井村さんにとって投資家という仕事について、コスパをどう感じていますか?

井村 こんなにコスパのいい仕事はありません。いわゆる本物の頭がキレる優秀なエリート層は、みんなコンサルとか外資とか良い会社に入る。優秀だから仕事も振られるし、自分みたいに寝ても覚めても株を調べるような時間はありません。

 だから、実は本気でやっているライバルはあまりいないんです。1億超えの投資家は割といますし、国内トップクラスだと200億ぐらい利益を上げている方もいらっしゃいます。Youtuberになって一発当てるよりも競争率を加味してコスパを考えると、リターンは大きいのではないでしょうか。