アカデミー賞でブレンダン・フレイザーが主演男優賞を受賞した『ザ・ホエール』。受賞を記念して、「週刊文春CINEMA!2023年春号」より彼のインタビューを一部抜粋して引用する(聞き手:猿渡由紀)。
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ブレンダン・フレイザーが、『ザ・ホエール』で見事に返り咲いた。
『青春の輝き』(92年)でブレイクを果たし、コメディ映画『ジャングル・ジョージ』(97年)を経て『ハムナプトラ』シリーズ(99年~)などでアクションスターとなった彼は、近年、スポットライトからやや遠ざかっていた。
2003年、ゴールデン・グローブ賞の投票団体ハリウッド外国人記者協会(HFPA)の元会長フィリップ・バークにセクハラを受けた屈辱を感じたことが大きな原因だ(そのことを彼は18年に告白した)。その後、母の死、離婚なども続き、彼は鬱に陥ってしまったのだ。
そんな彼に、夢のようなチャンスを与える人が現れた。『レスラー』(08年)でミッキー・ロークのキャリアを復活させたダーレン・アロノフスキーだ。
今作でフレイザーが演じるのは、並外れた肥満であることを恥じ、隠れて生きる男性チャーリー。世界プレミアとなった昨年夏のヴェネツィア映画祭で受けた反響の大きさにフレイザーは涙を流したが、以降も拍手と大絶賛を受けてきた。
彼は「僕は偽善者ではない」と宣言してゴールデン・グローブ授賞式をボイコットしたが(バークは別の問題を起こして除籍されたが、彼を守った人々はまだ全員いる)、放送映画批評家協会賞(Critics Choice Awards)で主演男優賞を受賞したとき、またもや涙でスピーチをしている。良いことも悪いこともあったから今があると語るフレイザーに、胸の内を聞いた。
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あらためて浴びる脚光は…
―『ザ・ホエール』で、今、あらためて脚光を浴びています。そのことをどう受け止めていますか?
僕の人生に起きたすべてのことが、ここへ連れてきてくれたのだと思っている。
ここまでの道のりでは、間違いをおかしたこともある。でも、そこから学んで同じことをやらないようにしてきたつもりだ。そして今、キャリアで最高の役が訪れたんだよ。それができたのも、すばらしい人たちのおかげ。
僕の仕事を評価してもらえるのは嬉しいが、それも優れたスタッフ、共演者に恵まれたからこそ起きたことだ。
―ここまでの間にはフラストレーションも感じましたか?