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 これは、出産の前に胎児の性別を鑑別し、女児の場合はそのまま「おろして」しまったからです。当時の技術でどれだけ正確に鑑別できたかは分かりませんが、1980年代、胎児の性別を鑑別できるという超音波機器が普及し、それが女児堕胎を大幅に増やしました。

 さらに問題なのは、このときがちょうど韓国のベビーブームで、「生まれる人がもっとも多い時期に男女比率が崩れる」という事態となりました。男の子を望む社会意識が強すぎたからです。これも、最近の合計出生率低下の一因だと見ることができます。先の記事の人も「相手」より「家」を前提にしていましたが、もっとも大きな理由は、なんだかんだで、やはり経済問題でしょうけど。

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なぜ韓国人は「自分の血」を残すことをためらうのか

 こんな状況ですが……私が不思議に思うのは、「民族という言葉を聖域として教えられた人たちが、なぜここまで『自分の血』を残すことをためらうのか」という点です。不思議というか、枯れた笑いしか出ません。2022年で20代、30代とすると、「民族」という言葉の聖域化が強くなった教育を受けた人たちです。

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 韓国で「左派政権」とされる金大中(キムデジュン)政権が始まったのが、1998年。それから韓国の教育は、いわゆる左派教育というものになりました。韓国の右派(保守派)は、決して民族という概念をおろそかにするわけではありませんが、国家としての大韓民国を重視します。これは、戦後、初代大統領になった李承晩(イスンマン)氏の考えを元とします。北朝鮮に対しても、韓国という国の一部を違法占拠している集団とし、決して「朝鮮半島に2つの国(政府)があるわけではない」点を強調します。

 しかし、いわゆる左派(進歩派、日本では改革派とも書きます)の場合は、国家より民族を優先します。これは、戦後、李承晩氏に選挙で破れ、後に暗殺された金九(キムグ)氏の思想を元とします。