恋人の恋人「メタモア」との関係性
――自分を起点にして放射状に1対1の関係性がたくさんあるイメージでしたが、お話をお聞きしているともっと“コミュニティ”に近いものなんですね。
きのコ 段々チームっぽくなってくるんですよ。私も「ポリアモリーは恋愛のひとつのスタイルです」って説明はするんですけど、実際にライフスタイルに落とし込んでいくと、恋愛のトキメキとかドキドキを超えてコミュニティになった先にポリアモリーの真価がある気がしています。
――きのコさんは著書『わたし、恋人が2人います。〜ポリアモリーという生き方〜』(WAVE出版)の中で、自分の恋人同士が仲良くしている姿を見て喜びを感じた、と書かれています。
きのコ 恋人の恋人を「メタモア」と呼びますが、一般的に考えると、恋人を共通にするメタモア同士は嫉妬しあう関係と思われるかもしれませんが、私自身、かつてMくんを共通の恋人としていたメタモアのDちゃんに絶大な信頼を置いていました。「コンパージョン」というんですけど、自分の好きな人が自分以外のパートナーを愛していることを感じたときに生じるハッピーな感情のことで、「嫉妬」の対義語と位置づけられるものです。
――具体的にどんなときに「コンパージョン」を感じますか?
きのコ Mくんが深く落ち込んでいた時、Dちゃんが彼に励ましの手紙を書いたんですね。それをMくんから見せてもらったことがあったのですが、Dちゃんが彼のことを深く愛していることが伝わってきて感動し、涙が出ました。
ただ、これは私がMくんDちゃん両方とすでに信頼関係があったからで、交際して日が浅かったり、互いのことをよく知らない関係性だと、コンパージョンに至ることはなかなか難しいと思います。
――たとえばメタモア同士、きのコさんの今の交際関係でいえば、MくんとAちゃんが恋愛関係になったとして、きのコさんは祝福できるものでしょうか……?
きのコ 全然ありです。
――新しい世界を垣間見た気がします…! そもそもきのコさんは九州大学大学院を卒業後、誰もが名前を知っている一流メーカーに勤務されていたそうですが、今はフリーランスでポリアモリーなライフスタイルを送られています。ご自身の変化をどのように捉えていますか。
きのコ 自分で言うのもなんですけど、履歴書がキラキラだった分、ずっとキラキラでいかなくちゃという強迫観念もあったし、そこでしか自己肯定ができなかったんです。高学歴・高収入の両方を手に入れたんだから、「このまま結婚して子どもを生めば私の人生、完璧に勝ち組!」って考えてました。
でも結局、離婚もして会社も辞めてしまったので収入もドカ減りしましたけど、自分も他人もなるべく傷つけずに生きる方法を模索してここにたどり着いたという感じですね。