ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表の大谷翔平(28)が1次ラウンドで二刀流による大活躍を演じ、チームを全勝での準々決勝進出に導いた。
打者では12打数6安打の打率5割、1本塁打、8打点で攻撃の核に。投手でも中国との初戦に4回無失点の好投で白星を挙げた。14年ぶりの覇権奪回を目指す日本を牽引する「二刀流」に、楽天監督として日本ハム時代の大谷と対戦し、WBCでは2013年大会で野手総合コーチを務めた梨田昌孝氏(69)の証言を元に迫った。
「右手をこねてバットを返さなかった」ゆえに生まれた衝撃弾
大谷は代表合流早々、阪神との強化試合で「膝突き本塁打」を放ち度肝を抜いた。相手は今季、先発ローテーション定着が期待される才木浩人投手。空振りを確信し、自ら「ベストボール」と称したフォークボールだった。
大谷が初めて見た才木の得意球、体勢は不完全ながら打球は軽々とフェンスを越えた。プロ関係者にも衝撃を与えた一発を、梨田氏は嘆息交じりに振り返る。
「大谷は低めに落ちていく球に対し、最後は膝を突きながらスイングの軌道をレベル(水平)にしようとしていた。インパクト後は右手をこねてバットを返さないようにしていた。右投げ左打ちの大谷は右手の方が強い。並の打者なら利き手(右手)を返してゴロにしてしまうところを我慢できていた。ウエートトレーニングなどで年々、強化されていたパワーに加え、確かな技術が裏打ちされている。山川(穂高内野手=西武)は『あんなの競技が違う』と表現していたが、プロの目から見ても桁違いのホームランだった」
1次ラウンドでも同様の技術が詰まった一打があったという。中国戦の四回1死一、三塁、大谷は膝下ほど低めのツーシームを捉え、左翼フェンス直撃の2点二塁打とした。体に巻き付くように振り出されたバットを右手で返すことなく、逆方向へ。もう少しで本塁打という当たりで、自身のWBC初安打、初打点をマークした。