1ページ目から読む
3/3ページ目
大谷は甲斐より2学年後輩に当たる。日本球界で年齢は絶対的な指標。大谷でさえ今回、代表に合流した際、多くの面識がない選手に対し、最初に年齢を確認するほどだった。先輩である甲斐に対し、立て続けにサインを拒否することに躊躇はないのか。梨田氏が着目したのは大谷の仕草や表情だった。
サインを変更をしても文句を付けようがない好結果を出す
「大谷は不満げに、その球種は嫌だというふうに首を振っているわけではなかった。捕手を尊重しながらも自分が投げたい球種とは違うとシンプルに伝えているように見えた。ああいう首の振り方だと、捕手は自分が嫌われているとは思わない。それほどリズムのいい振り方だった」
大谷は希望と異なる配球にいらだつことなく、捕手のプライドを傷つけないように振る舞いながら甲斐のサインを変えさせた上で、文句の付けようがない好結果を出した。その自制心の強さはバットを返さずに我慢し、長打にできるバッティングにも相通じるものを見いだせる。
梨田氏は斎藤佑樹投手のプロ入り時、日本ハムで監督だった。斎藤と同学年で高校時代、ライバルだったが、プロで大きな差がついていた田中将大投手(楽天)とは、自動車の排気量を引き合いに比較し「よく『斎藤が2500ccならマー君は5000cc』と言っていた」と回顧しつつ「同じように例えるなら大谷は二刀流選手として、その倍の『10000cc』のスケールがある」と表現した。心技体で絶頂期を迎えた感がある今の大谷の二刀流には、この言葉も大袈裟には聞こえない。