技術の神髄は日本ハム時代に片鱗
梨田氏は大谷のこの2つの打撃に、ある試合を思い返していた。2016年9月10日、日本ハム時代の大谷の相手チームは梨田氏が監督を務めていた楽天だった。大谷は六回にこの日2本目の本塁打を、左腕の金刃憲人投手から放っている。ベンチでサングラス越しに表情一つ変えずに見詰めていた梨田氏の心境は、実は穏やかではなかった。
「インコースにボール1個分は外れていたシュートをバックスクリーンに運んだ。あの球をあそこまで飛ばすとは……と思った。その時ぐらいから右手をこねない癖がついていて、よりバットがインサイドから出るようになっていた」
同年、大谷は日本時代で最多の22本塁打を放った。22本目はこの一発だった。
大谷は3月12日に行われたオーストラリア戦の一回、自身の看板直撃の140メートル級の特大本塁打を放った。大谷ならではの巨大な放物線だったが、梨田氏の目前で22歳にして片鱗を見せていた打撃技術の神髄という意味では、阪神戦での膝突き本塁打や中国戦でのフェンス直撃の二塁打がそれであったのだ。
一方、投手としての大谷は1次ラウンドの中国戦に先発登板した際、甲斐拓也捕手(ソフトバンク)と実戦で初めてバッテリーを組んだ。試合を通し、再三、甲斐のリードには首を振っていた。一見、呼吸が合っていないようにも見えた。しかし、近鉄での現役時代に捕手だった梨田氏は「そういうわけではないと思う」と捉える。
首振り連発でも甲斐は「大谷に嫌われているとは思わない」
日本代表の金看板の強力先発陣は、大谷、佐々木朗希投手(ロッテ)が甲斐と、ダルビッシュ有(パドレス)、山本由伸(オリックス)両投手が中村悠平捕手(ヤクルト)とそれぞれコンビを組む。パワーピッチャーの大谷、佐々木には、体ごと投球を止めにいく攻撃的なブロッキングが持ち味の甲斐との相性が考慮されていると梨田氏は分析する。