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ヒグマとの突然の遭遇、反撃に…

 午後の活動を始めたとき、ブンタはそばにいなかったが、いつものことなので特に気にすることもなく、午前中は回らなかった“ポイント”へと向かう。活動開始から10分足らず、車から100メートルほど離れた茂みをぬけると、そこにヒグマがいた。 

野生のヒグマ(知床半島) ©AFLO

「距離はせいぜい2、3メートルしかありませんでした。だから、クマだと認識する前に『何かいる!』という感じで、思わず叫びながら持っていた高枝鎌(長い柄のついた鎌)を反射的に突き出していました。私が先に手を出したんです」

 鎌は四つん這いになったクマの前肢の肩付近に当たった瞬間、ポキリと折れた。同時にクマが反撃に出てくるのがわかった。真野が本能的に右腕で顔をガードするような態勢をとると、クマはその右腕に噛みついてきた。

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持っていた鎌は一瞬でクマに折られた

クマは腕を3回噛むと、ようやく少し離れた

「それで小指の骨が砕けて、今でもほら、ここが……」

 そう言って真野が右手と左手の小指を合わせると、確かに右手の小指付近が抉られたように凹んでいる。クマは真野の腕を3回噛むと、ようやく少し離れた。

「ちょうどクマと私の間に高さ3メートル、太さ15センチぐらいの松の幼木があったので、それを挟んで対峙するような格好になりました」

 クマの体長は1.5メートルほど、体重は100~150キロの成獣のようだった。松の木を間に挟んで、クマが左に回り込もうとすれば真野は右へ、右から回り込もうとすれば左へ逃げる“追いかけっこ”のような状態になった。

「それを3回ぐらい繰り返した後で、『いつまでもこうやっててもしょうがない』と。向かってくるクマの顔面を右脚で蹴ったんです。格闘技の経験はありませんが、ボクシングでいうカウンターのような感じで自然と足が出ました」