スーパーが「セルフレジ」の万引き被害に頭を悩ませている。バーコードの読み取りから会計までを客自身が行うセルフレジは、店員の目が届きにくいのだ。

 しかし、セルフレジで増えたのは万引きだけではない。あるスーパーの店員は「セルフレジの導入でおかしな客の迷惑行為も目立つようになりました」と話す。店員が目撃したセルフレジのヤバい客を紹介する。(取材・文=押尾ダン/清談社)

写真はイメージ ©️AFLO

 

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家族5人でセルフレジをぐるりと取り囲み…

 セルフレジには「人手不足解消」「会計時間短縮による回転率アップ」「感染症予防」などのメリットがあるとされる。

 たしかにセルフレジを利用すると便利で、あまり並ばずに会計できるし、有人レジに比べて列の進み具合が格段に早い。動作の遅い店員にイライラさせられることもない。

 近所のスーパーで毎日買い物をするという浅井恭子さん(仮名、36歳)も、セルフレジの良さについてこう話す。

「セルフレジのおかげで買い物時の行列のストレスがかなり軽減されました。夜6~7時の混雑する時間帯に有人レジでお会計をするために行列をつくっている人を見ると、『なんでセルフレジを使わないんだろう?』って不思議に思うくらいです」

 その一方、スーパー側が頭を悩ましているように、セルフレジは万引き被害に遭いやすいデメリットもある。じつは浅井さん自身、危うく万引きしそうになったヤバい経験があるという。

「その日、考えごとしながら買い物していたんですね。心ここにあらずの状態でセルフレジに行き、無意識に商品をマイバッグに入れて外に出たんですが、家に着く直前にハッと我に返ったんです。『あれ? 私さっきのスーパーでお会計したっけ?』と。

 でも、どう考えてもお金を払った覚えがなかったんですよ。あわててスーパーに戻り、何食わぬ顔で商品のバーコードをスキャンして事なきを得ましたけど……。この一件で『だからセルフレジって万引き被害が多いのか』と妙に納得しました」

 実際に首都圏近郊のスーパーで働く太田鈴羽さん(仮名、44歳)はセルフレジの万引きを何度も目撃したことがある。

「なかでもタチが悪かったのは、中高生ぐらいの子ども3人を含めた家族5人でセルフレジをぐるりと取り囲み、案内係の私に商品のバーコードを読み取っているところを見せないようにしていたお客さんです。もう、見るからに怪しすぎるんですよ。

 そこで『おひとりさまずつお会計をお願いします』と注意したんですが、すると『そんなの客の勝手だろ!』と逆ギレ。ヤバそうな雰囲気の人たちだったのでそれ以上は何も言わなかったんですが、あとで聞いたらブラックリストのお客さんでした」