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両親が遺した「いらない実家」を売却しようとしたが…還暦超えの長男が直面した「ニュータウン相続」の厳しい現実

『負動産地獄 その相続は重荷です』#3

2023/03/27

source : 文春新書

genre : ライフ, 社会

note

 Aさんのケースはまだよいほうです。売れていないとはいえ査定額は1800万円。都心まで遠いとはいえ、横浜市内へのアクセスは確保されています。市内に勤めていて通勤が車利用であればまだ売れる可能性があります。首都圏ではすでに価格査定すら困難になったニュータウンが続出しています。

 では買い手も借り手もいない、利用価値を失ってしまった「負動産」や「腐動産」をこの先どう扱っていけばよいのでしょうか。車や電気製品などの動産であれば、捨てることができます。ところが不動産は手放すことができず、手放せない限り永遠にお付き合いを続けていかなければならない存在なのです。

Aさんの長男に届けられたのは…

 Aさん宅の実情は残酷です。翌年5月、Aさんの息子さんに届けられたのは実家の固定資産税通知書でした。年間の固定資産税は15万円。使いもしない不動産を管理する苦痛に加えて毎年税金を払わなければならないのです。

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 管理が面倒だからと言って家を解体撤去すれば、小規模宅地に適用されている固定資産税の減額(固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1)がなくなります。税負担は数倍に膨れ上がるので必死に残された家を管理しなければなりません。

 そして管理を続けられずに放置し、自治体から特定空き家として指導、勧告を受けるようになれば、最悪、小規模宅地等の特例を剝奪される可能性があります。

 こうなるともはやニュータウンに残された不動産は、資産ではなく負債以外の何物でもなくなります。そしてニュータウン相続は一次相続を経て、これからいよいよ二次相続が本番を迎えます。全国2000か所のニュータウンで相続した家で、途方に暮れる人たちが続出するのは、もうすぐのことなのです。

負動産地獄 その相続は重荷です (文春新書)

負動産地獄 その相続は重荷です (文春新書)

牧野 知弘

文藝春秋

2023年2月17日 発売

両親が遺した「いらない実家」を売却しようとしたが…還暦超えの長男が直面した「ニュータウン相続」の厳しい現実

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