みんなが打たせてくれた一撃だったかもしれない。
不振に喘いだ主砲の初タイムリーは5回だった。無死一、二塁。イタリアベンチが送り出した右腕・ニトリの初球、外角低めの148kmを5番・村上宗隆内野手は迷いなく振り抜く。その瞬間に満員の東京ドームに響いたのは、今度こそため息ではない。村上がずっと忘れていたあの大歓声が、打った瞬間、満員のドームに戻ってきた。
左中間を破るタイムリー二塁打。二塁の塁上に立った村上は、一瞬、身を屈めて咆哮を上げるように力を込めて4度手を叩くと、一塁ベンチの仲間たちに向かって両手を掲げて合図を送る。そしてまた両手を叩き、最後にペッパーミル・パフォーマンスで自らの大会初タイムリーを祝福した。
「チャンスで回ってきて打てずに、残塁がすごく多かったんですけど、初めてタイムリーが出てすごく良かったと思います。試行錯誤してこれだったらいけるという自分の中で根拠があった。その中で自信を持って打席に立てましたし、それが間違いじゃないなと思っています」
手応えのない長いトンネルの中で
長いトンネルの末の一撃だった。
1次ラウンド4試合で4番を任されたが、14打数2安打の打率1割4分3厘と不振に喘いだ。ずっと「これだ」という感覚がないままに打席に立ち続け、大会に入ると外国人審判とのストライクゾーンの違いに戸惑った。確信を持って見逃した球が「ストライク」と判定され、そしてボール球に手を出してしまう悪循環にもハマって、泥沼はどんどん深くなっていった。