バイデン大統領は、全顧客を保護するとした一方で、経営陣を解雇する投資家は保護しないなどと極めて厳しいことも言及し、破綻の全容も明らかにするとしている。破綻直前に銀行幹部が5億円近い保有する株式を売却していたと可能性が浮上し、司法省などが捜査に着手したとの報道も出ていて、銀行幹部に対する怒りと不信感が広がっている。バイデン氏は「必要なことは何でもやる」と言って、「一般の方の預金は必ず守る」とも明言した。
アメリカには預金者1人あたり25万ドル(約3300万円)までを保護する制度があるが、今回のように上限を持たせず「預金を全額保護する」というのは異例だ。この“前代未聞”ともいえる対策をとった背景には、できるだけ早くこの混乱を落ち着かせ、バイデン氏が当時副大統領として対応に苦慮したリーマンショックの再来にしてはいけないという強い危機感があったとみられる。
SNSで一気に不安が拡散
預金が一気に引き出された背景には、“最新の銀行破綻劇”ともいえる、現代ならではともいえる事情がある。
今回経営破綻したシリコンバレー銀行は、債券売却で損失を出してしまったため、3月8日に増資計画を発表。すると「この銀行は危ないのではないか」という情報がSNSで一気に拡散したのだ。
投資家たちは「システムが使えなくなっている」「オンラインでアクセスができなくなった」などと次々に投稿。ある投資家が「投資アドバイザーにこの銀行を使うなということを言われた」などと投稿すると、閲覧は630万件以上にもなった。このように、スピードを持って一気に情報が広まり、不安が増大して、取り付け騒動に繋がったのだ。
そして、9日には預金全体の4分の1=420億ドル(約5兆6000億円)が引き出され、10日には経営破綻した。たった2日間で破綻に追い込まれた形だ。
こうした状況に、議会下院・金融サービス委員会のマクヘンリー委員長は「ツイッターを利用した史上初の銀行取り付け騒動だ」と声明を発表。これまでとは全く違うペースで情報が広がったということがわかる。