いま65歳以上の世帯のうち、31.7%が単身女性です(厚生労働省『国民生活基礎調査』2021年)。死別、非婚、離婚……理由はさまざまながら、この20年でその数は2倍に。広島県尾道市の山間の一軒家で暮らす、102歳の石井哲代さんもその一人。小学校教師として働き、子どもがいなかった哲代さんは、20年前に夫が亡くなって以来、ずっと一人暮らしです。『大家さんと僕』のカラテカ・矢部太郎さんが訪ねました。『週刊文春WOMAN2023春号』より、一部編集の上ご紹介します。

◆◆◆

哲代 東京からようおいでくださいました。

ADVERTISEMENT

矢部 いえいえ、こちらこそ。哲代さんの本、『102歳、一人暮らし。』を読ませてもらって、すごくよかったので、今日はお会いできて嬉しいです。

哲代 まあ、天にも昇る思いです(笑)。

哲代おばあちゃん(左)と矢部太郎さん ©文藝春秋

矢部 まだ昇らないでください(笑)。哲代さんの本、東京の本屋さんにも、ドンドンドンとたくさん積んでありました。

哲代 嬉しいねえ。(自分の本の表紙を見て)ええ顔をしとる。

矢部 本当に……あ、今日のエプロンと一緒だ。なんか嬉しい。

哲代 本当はほかにも色々持っとるんですが(笑)。

矢部 勝負エプロンなんですね。

矢部 僕、芸人をしながら漫画も描いていまして。『大家さんと僕』という漫画は、僕がお部屋を借りていた大家さんのおばあちゃんとの交流を、僕なりに大家さんという漫画のキャラクターにさせてもらって描いたんです。

哲代 へえ~。その大家さんは今おいくつなんですか。

©文藝春秋

矢部 もう亡くなってしまったんですが、大家さんが80歳ぐらいのときに僕が引っ越してきて、10年ぐらい住まわせてもらいました。

哲代 そうですか。

矢部 この漫画に描かせてもらった大家さんとも、すごく仲良くさせてもらって、一緒にお茶したり、食事に行ったりしてたんです。大家さんもユーモアがあって、ご近所さんとも仲良しで。

哲代 そうなんですね。

矢部 僕はそれまで都会に住んでいたので、そういう繋がりがほとんどなかったんですね。ないことが逆に心地よいというか、暮らしやすいなって思っていて。でも、大家さんと付き合うようになって、季節の行事を一緒にやったりして、学ぶことがたくさんありました。大家さんと繋がることで、自分は一人じゃないんだと思えたんです。