1ページ目から読む
3/4ページ目

 9月23日、敵地でのツインズ戦。この日の最大の敵は、天気だった。平均気温11度、灰色に染まった空から落ちてくる雨、時折強く吹くライトからレフトへの風。最悪のコンディションでマウンドに上がった大谷は、2番ホセ・ミランダに四球、3番ニック・ゴードンに死球、4番ジオバニー・ウルシェラにも四球を与えて、1アウト満塁。5番ジェイク・ケイブをダブルプレーに仕留めたが、3アウト成立前にミランダがホームを踏んで1失点。大谷は「踏み出した左足が滑ってしまって、制球力を保つことができなかった。結果的に6与四球だったので、最後まで修正することが難しかった」と振り返った。

 その後も走者を出す苦しい投球が続いた大谷だが、4回裏1アウトでむかえたゲイリー・サンチェスを相手に、背中側からインサイドに大きく曲がる「バックドア・カーブ」で奪った三振がシーズン200奪三振目となった。大谷は「200奪三振は、自分にとって大きなマイルストーンです。この記録は、中6日でマウンドに上がり続けなければ、達成できないことなので、シーズンを通して安定的に投球ができた証です」と喜んだ。もちろん、シーズン200奪三振、30本塁打もMLB史上初の快挙となる。最悪のコンディションの中、5回2失点、7奪三振で14勝目を記録した。残り先発予定は2試合。規定投球回数まで、残り9イニング。

期待されたノーヒット・ノーランの達成は…      

 9月29日、本拠地でのアスレチックス戦。この日が本拠地エンゼルスタジアムでの最終登板となった。大谷の投球を見ようと、この日も3万1293人のファンが詰め掛けていた。1回表、先頭トニー・ケンプに対して四球。2番ビマエル・マチンを三振、3番ショーン・マーフィーをダブルプレーに仕留める上々の立ち上がりを見せた。

ADVERTISEMENT

 しかし、この日の大谷は、ここからがすごかった。2022年の投手大谷を象徴するスライダーを中心に三振の山を築き、ヒット性の打球も打たれず、スコアボードには0が並んでいく。7回終了時点で、ケンプに与えた初回の四球のみ、ノーヒット・ノーランを継続していた。

 8回表、先頭のセス・ブラウンをキャッチャー・ファールフライ、続くジョーダン・ディアスをスライダーで三球三振に仕留めた。間違いなくこの日、スタンドに詰め掛けたファン全員がノーヒット・ノーランの達成を目撃できると思い始めた瞬間、1ボール2ストライクと追い込まれたコナー・カペルが大谷のカットボールに食らい付き、打球が無情にもショートのソトの横を抜けて行った。スタンドは大きな溜息に包まれたが、その直後、大谷の快投を称たたえる大きな拍手がスタンドに響き渡った。