WBC2023でも侍ジャパンを牽引する活躍を見せた大谷翔平。MLBでもこれまで同様、またはそれ以上の活躍が期待される同選手だが、2023年のMLBでも、彼は好成績を残し続けることができるのか。
ここでは、MLBジャーナリストのAKI猪瀬氏の著書『大谷翔平とベーブ・ルース 2人の偉業とメジャーの変遷』(角川新書)の一部を抜粋。MLBの2023年シーズンが開幕したいま、改めて大谷翔平がこれまでもたらしてきたインパクトを振り返っていく。(全2回の2回目/前編を読む)
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米大学球界、二刀流の称号「ジョン・オルルド賞」
幼少期に野球を始めた際、一番上手い子どもは投手を任せられることが多い。その後、適性を見ながら各ポジションに分かれて成長していく。日本よりもポジションが流動的なアメリカでは、高校でも大学でも、投手兼遊撃手、投手兼外野手、投手兼内野手兼外野手など、多くの選手が複数のポジションを経験している。大学では複数のポジションを守る選手は減るが、高校レベルでは投手を中心に兼任している選手が数多く存在する。
2023年以降に、外野手兼リリーフ投手を目指すことを公言しているボストン・レッドソックスのレギュラー外野手のアレックス・ベルドゥーゴも、高校時代は最速158キロの豪腕左腕兼外野手だった。高校卒業時点でロサンゼルス・ドジャースからドラフト指名を受けたベルドゥーゴは、「スカウトから、投手ではなく打者として育成していくと言われたので、投手を続けることは考えもしなかった。レッドソックスに移籍して、大谷の活躍を見て、もう一度、二刀流でプレーしたいと思うようになった」と語っている。
現役最強捕手と称されるフィラデルフィア・フィリーズのJ・T・リアルミュートも、高校時代は強打の捕手兼クローザーを務めていた。「僕には大谷のようにプレーすることはできないが、大谷の活躍で二刀流を目指す選手は、増えていくだろう」と語っている。
大谷のチームメイト、マイク・トラウトも、高校時代は投手から始まり、遊撃手、そして外野手と様々なポジションを経験している。25 年近くMLB取材をしてきた私の感覚では、高卒のMLB選手は、ほぼ全員が投手兼野手の二刀流を経験している。
大学球界ではMLB同様に「大谷ルール」が採用されているので、NCAAのディビジョン1に所属する有名強豪大学では、ほとんどのチームに二刀流の選手が存在する。カレッジワールドシリーズ(全米大学野球選手権)で最多となる12 回の優勝を誇る南カリフォルニア大学では、2023年シーズンは2人の二刀流選手が登録されている。