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「僕には大谷のようにプレーすることはできない」二刀流経験を持つ選手が多いMLBでも驚かれる大谷翔平の“スゴみ”

『大谷翔平とベーブ・ルース 2人の偉業とメジャーの変遷』より #2

2023/04/10

 過去の大学球界で最も有名な二刀流選手だったのが、シアトル・マリナーズ時代にイチローとプレーした経験を持つジョン・オルルドである。高校時代から投手兼一塁手として有名だったオルルドは、地元のワシントン州立大学に進学後も投手兼一塁手としてプレーしていた。大学1年生では打者として4割1分4厘、5本塁打、20打点。投手では8勝2敗、防御率3.00を記録。大学2年生のときには、打者として4割6分4厘、23本塁打、81打点。投手ではシーズン無敗となる15勝0敗、防御率2.49を記録した。

 順調に大学生活を送っていたオルルドだったが、大学3年生の1989年1月11日、室内練習場でランニング中にくも膜下出血で倒れ、緊急手術を受けて2週間入院。

 退院後、チームに復帰したオルルドは、その後も二刀流でプレーを続け、同年のドラフトでトロント・ブルージェイズから3位指名を受けてプロ入りを果たす。大学球界一の二刀流は、早くからドラフト1位候補として注目を集めていたが、健康問題を理由に指名回避が続き3位指名となった。

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 指名を強行したブルージェイズの判断は正しく、オルルドは1965年に現行のドラフト制度が導入されて以降、マイナーを経験せずいきなりのMLBデビューを飾った。これは史上17人目の快挙だ。オルルドは実働17年間で、2239安打を記録して2006年に引退。マイナー経験は、05年にリハビリのためにプレーしたわずか3試合しかなかった。

 首位打者1回、ゴールドグラブ3度、オールスター選出2回、サイクル安打2回など一時代を築いた名一塁手だったが、大学時代のような二刀流でのプレーはまったくなかった。オルルドの引退後、NCAAは、二刀流で優れた選手に贈る新たな賞として「ジョン・オルルド賞」を2010年に制定した。

歴代受賞者たちはMLBで活躍できたのか?

 栄えある第1回の受賞者は、フロリダ州立大学のマイク・マギー中堅手兼投手だった。マギーは2011年ドラフトでマリナーズから15位指名を受けてプロ入りし、外野手専任となったがプロ生活はわずか3年で終わった。

 第2回の受賞者は、バージニア大学のダニー・ハルツェン投手兼一塁手。大学球界を代表する左腕投手として2011年ドラフトでマリナーズ1位指名、全体でも2位という高評価でプロ入りも、左肩の度重なる故障で、MLBデビューを飾れたのは19年のカブス時代。MLBでの実績はわずか6試合に終わった。

 第3回の受賞者は、フロリダ大学のブライアン・ジョンソン投手兼一塁手。2010年に日本で開催された世界大学野球選手権に、アメリカ代表として来日。12年ドラフトでレッドソックスから1位指名を受けてプロ入りを果たす。プロ入り後は投手専任で15年にMLBデビュー。18年の38試合登板が自己最多となり、19年を最後にMLBでの登板はない。

 第4回の受賞者はゴンザガ大学のマルコ・ゴンザレス投手兼一塁手。2013年に投手として7勝3敗、防御率2・80。打者では3割1分1厘、2本塁打、26打点を記録してジョン・オルルド賞を受賞。その年のドラフトでセントルイス・カージナルスから1位指名を受けてプロ入りし、14年にMLBデビュー。17年7月21日、トレードでマリナーズへ移籍。移籍後は技巧派左腕として活躍し、18年に13勝を挙げる。19年3月20日、東京ドームで行われたオークランド・アスレチックスとの開幕戦で自身初となる開幕投手を務め、シーズン16勝を記録した。現在でもマリナーズの先発投手として活躍している。

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