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全107球中スライダーが51球…160km/h超の直球を投げる大谷翔平がシーズン終盤で変化球を多投するようになった“納得の理由”

『大谷翔平とベーブ・ルース 2人の偉業とメジャーの変遷』より #1

2023/04/10
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 8回2安打無失点、10奪三振で15勝目を手にした大谷は試合後、「先発投手だったら全員が、登板前はノーヒットや完全試合を思い描いてマウンドに上がっていると思います。もちろん、僕自身もそうです。ただ今日は、ストレートの走りとか、実際のマイル表示も出ていなかったので難しかったですが、スライダーがよかったので、8回を投げきることができました」と振り返った。

 アメリカ国内で注目を集めているジャッジとのMVP争いについては、「MVPを獲得した昨年よりも、いいシーズンを過ごせたと思っています。特に投手として、昨年の経験を活いかして自信を持って投げることができました。MVPは記者たちの投票なので専門家に任せますが、自分が取り上げられていることについては楽しんでいます。ジャッジが第61号を打った試合を見ましたが、ジャッジの活躍は、一人の野球ファンとして楽しんでいます」と語った。

 大谷が持つ眩まぶしいほどのスター性ならば、ノーヒット・ノーランを達成して規定投球回数もクリアすると感じていたファンが大半だったに違いないが、次の試合までお預けとなった。残り先発予定試合はレギュラーシーズン最終戦の1試合。規定投球回数まで残り、1イニング。

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史上初、規定打席・規定投球回数クリア

 10月5日、敵地でのアスレチックス戦。3番指名打者兼先発投手として試合に望んだ大谷は、1回表、ライト前ヒットを記録。1回裏、先頭のケンプをスライダーで三振、2番マーフィーはセンターフライ、3番ブラウンはサードゴロ。最後のアウトを見届けた大谷は、ゆっくりとした足取りで一塁側ダッグアウトに向かい、眩しそうにスタンドを見回してからダッグアウトに消えて行った。前代未聞の偉業、規定打席と規定投球回数をダブルクリアした史上初の選手が誕生した瞬間だった。

 2018年3月29日、大谷翔平がデビューを飾ったオークランドで歴史的偉業を達成した22年は、気温20度、爽さわやかな秋風とともに幕を下ろした。 大谷の史上初の快挙達成を受けて、ロサンゼルス・タイムズの名物コラムニスト、ディラン・ヘルナンデスは、「大谷翔平 投手としての進化は上昇傾向が続く」のタイトルでコラムを掲載した。そのコラムの中で大谷は、「今年は色々試しながら投球しました。来年以降、もっと問題を解決できれば、もっといい成績を残すことができると思います」と語っている。

©文藝春秋

 コラムの最後にヘルナンデスは、「大谷も人間であり、他の選手と同じように天井がある。しかし、大谷の天井は、投手でも打者でも、まだ見えていない」と締めくくった。

 2022年の大谷翔平は、史上初となる規定投球回数、規定打席をダブルクリア、史上初となる15勝+30本塁打、史上初となる200奪三振+30本塁打、史上初となる二桁勝利+二桁本塁打+二桁盗塁を記録した。

 そして、1918年のベーブ・ルース以来となる104年ぶりに二桁勝利+二桁本塁打を達成した。ベーブ・ルースの孫であるトム・スティーブンスは、「ルースが生きていれば、間違いなく翔平の活躍を喜び、記録達成を応援していたと思う。これからも大谷翔平のキャリアに沢山の幸運が訪れることを祈っています」と賛辞を贈った。

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全107球中スライダーが51球…160km/h超の直球を投げる大谷翔平がシーズン終盤で変化球を多投するようになった“納得の理由”

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